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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 32
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私? 私の顔が、なに?)
 首謀者とか面白いネタとか、これもまた妙に不穏な言葉達だ。首を傾け、何の話なのかと無言でアーレストに問い掛けてみる。が。
 ぷいっと。露骨に顔を逸らされてしまった。
 そういえば、村を案内した時もいきなり顔を逸らしていたし、初めて会った時も何故か目を丸くされた。
 これは……二人揃って、自分の顔を「見るに堪えない愉快なモノだ」とでも言いたいのだろうか。
 そりゃ、美辞麗句にすら無縁な造りだとは自覚してるし、生まれついての物を今更悲観するつもりも無いけれど……こういう場合は、ぶん殴っても怒られないかな? 良いよね、少しくらいキレても。
 「つー訳で、だ……」
 ふと。
 神父の失礼な態度を喉で低く笑った失礼な台詞を吐く男性が、背筋をビシッと伸ばし
 「感動の再会と行こうじゃないか! 愛しの我が娘、ミートリッテよ!」
 「ひぃっ!?」
 突然、くるん! と勢いよく振り返り、両腕を広げてミートリッテに突進。
 「な、なになになに!!? な、え、だっ……! ふ……っんぎゃあああああッ!?!?」
 中肉中背な見掛けに反した力強さで、ガバッと抱き付いてきた。
 「だ、だだだっ、だれ!? なにもの!? アナタはどこのどちらさまーッ!?」
 「……うん? んんんー……?? 父親の顔を思い出せないなんて、ひっどい娘だなぁ……。私はいつだって、お前達母子の幸せを思っていたのに」
 「ち、父親あっ!? なに言って……!?」
 背けようとする顔に頬擦りしてくる見知らない男性は、勿論ミートリッテの父親などではない。実の両親は病で倒れ、海に溶けて永遠の眠りに就いたのだから。
 第一、肩甲骨の下辺りまで伸びた金髪を首筋で束ねている男性は、どう見ても二十代後半……アーレストより少し上くらいだ。十八歳になったばかりの子供が居るとしたら、立派な犯罪だろう。
 (親しげに話してたし、この人もアーレスト神父の変人仲間!? 類は友を呼ぶってやつ!? やだやだ、そんなのに親族扱いされるなんて! 果てしなく迷惑だぁーっ! しかも、なんか甘い匂いが……)
 「……あ、れ?」
 「ん? お……っと?」
 意図せず、両膝がカクン! と落ちた。
 拘束力が緩まった男性の腕を抜け、地面に座り込んでしまう。
 「ミートリッテ……!!」
 ハウィスの心配そうな叫びが聞こえたが、急激な眠気に体の自由を奪われて……声が出ない。
 (あの匂い……だ……。どうして、今……)
 「なんだぁ? まだ解いてなかったのか? お前なら容易く解除できただろうに」
 (解、除……?)
 男性が呆れた声色をアーレストに向ける。
 アーレストは、溜め息を一つ吐いて答えた。
 「先程解きましたよ。貴方に関する記憶も正常に戻っています。ただ、彼女は自身でも長期
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