第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#12
PHANTOM BLOOD NIGHTMAREW 〜Master Of Circular〜
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駆け抜けてきた幾つもの苦難、
勝機などなくても、可能性など視えなくても、
いつだって共に、二人で乗り越えてきたから。
未来の視えない一面の闇の中、
互いが互いの 『希望』 そのものだったから。
だから、窮地に陥れば陥るほど二人は笑う。
その精神は燃え上がる。
熱く、激しく、燃え尽きるほどに。
「即興のコンビプレーなんぞ必要ねぇ。
何しろヤってねーからな。
一応相手を意識しつつ、基本全開。
機が来たら、 “アレ” で極める」
「了解!」
互いの気持ちを確認せず、その必要もなく二人は大地を蹴った。
即座に大樹が蠢き、街路を踏み砕きながら前進してくる。
恐怖と脅威を振り撒く、破滅の戦風。
しかしソレすらも、二人には爽やかな旋風に感じられた。
【2】
現実感を完全に喪失した異界の中を、
吉田 一美は手を引かれながら駆けていた。
路傍で呼吸すらせず佇む人々、波音を止めた海原、囁きを忘れた熱帯の樹木。
運河の傍に設立されたイギリス貴族の像を横切り、
その進路を南南西へとひたすらに走る。
以前の彼女であるならば、もうとっくに息があがり貧血を起こし倒れても
不思議のない速度と走距離であったが、
少女は貴女の手を握ったまま呼吸を乱さず汗一つかかない。
遠間から、地震とも台風ともつかない轟音が断続的に聴こえる。
怖くないといえば嘘になるが、それでも少女は憂慮を振り切って口を開いた。
「このまま、逃げてるだけで良いんですか?
空条君達の行った方角からどんどん離れてる。
私も加勢に行った方が良いんじゃ……」
腰まで達する、長く美しい黒髪を気流に揺らしながら
歴戦の貴女は振り向かずに言った。
「今回は、ダメ。幾らなんでも状況が悪過ぎる。
アナタのスタンド能力は、皆をサポートするには向いてるけど、
“アナタ自身に” 一人で敵に立ち向かえる実力はない。
もし 『スタンド使い』 と “紅世の徒”
二人以上に囲まれてもアナタは戦える?」
「!」
予期せぬ問いに少女は息を呑む。
ただ漠然と、スタンド能力に目醒めた時から承太郎と共に戦う映 像
ばかりを想い浮かべていたが、「現実」 に戦う相手がそのような都合の良い状態で
向かってくるわけがない。
責めるような口調ではなかったが、厳格なエリザベスの言葉に
吉田は羞恥と己の未熟さを再認識する。
確かに彼女の言う通り、
幾ら常人とは違う 『能力』 に目醒めたとはいえ生身の自分は、
戦闘経験は疎か口ゲンカすらも怖くて出来ない一介の女子高生に過ぎない。
それなのに一体何を舞い上がっていたのか、
消沈しながら走る吉田にエリザベスは口調を違えずに告げ
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