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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十七話 悪縁
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たのではないのか?」
私の言葉にシュタインホフは違うというように首を振った。
「カストロプ公爵家とキュンメル男爵家は血縁関係が有った。キュンメル男爵家の当主は病弱で、それに付け込んでカストロプ公はキュンメル男爵家の横領を図ったのだ。ヴァレンシュタイン弁護士はキュンメル男爵家の顧問弁護士だった」
「……横領するにはヴァレンシュタイン弁護士が邪魔だったということか」
「そういうことになる。フロトー大佐達がカストロプ公がヴァレンシュタインに殺されたと思ったのは復讐だと思ったからだ。彼らがカストロプを去ったのは身の危険を感じた所為だろう」
「つまり、彼らは軍に戻りたくとも戻る事ができず闇の世界に入ったと……」
自分の声が掠れているのが分かった。まさかあの事件が今回の一件に絡んでいるとは思わなかった。十年前からの因縁、悪縁と言って良いだろう、こんな事が有るのか……。
「ヴァレンシュタインが生きている限り軍には戻れず、ヴァレンシュタインを深く恨んでいる男、内務省にとってフロトーは使いやすい道具であろうな……」
シュタインホフの声が部屋に重く響いた。それきり沈黙が落ちる。おそらく私もシュタインホフも同じ事を考えているだろう。まさかとは思う、しかし……。
「シュタインホフ元帥、ヴァレンシュタインは知っていたのだろうか?」
「……分からん。両親の死に関してヴァレンシュタインは殆ど喋っていない。軍の実力者になってからもそれを調べた形跡が無いのだ。それをどう取るべきか……」
「……」
ヴァルデック男爵家、コルヴィッツ子爵家、ハイルマン子爵家、あの事件はその三家のどれかが起したと言われていた。ヴァレンシュタインは敢えて調べる必要が無いと思ったのか、それとも既に真犯人を知っていたのか。だとすれば何処からその秘密を知ったのか……。
「エーレンベルク元帥、ヴァレンシュタインには皇帝の闇の左手だと言う噂があったと思うが……」
「!」
シュタインホフが私を探るような視線で見ていた。私は何も言う事が出来ず、ただシュタインホフの顔を見ていた……。
帝国暦 487年 12月25日 シュムーデ艦隊旗艦 アングルボザ エグモント・シュムーデ
艦隊はアイゼンヘルツで補給をしている。フェザーンまでは後十日ほどで着くだろう。
「先ずは順調だな、シュムーデ提督」
「そうですな」
スクリーンにフェザーン駐在高等弁務官レムシャイド伯爵が映っている。白っぽい頭髪と透明な瞳を持つ人物だ。先日は捕虜交換の共同宣言で帝国全土にその顔が流れた。帝国でもっとも有名な人物の一人だろう。
順調、順調というのは何の事だろう。此処までの進軍のことならまさに順調と言って良いだろう。それとも内乱の討伐に関してだろうか? 確かにこちら
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