第38話 引っかかり
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んて頭の片隅に考えなければやってられない気がしてきた。
「優木サン、メインディッシュは?」
「まずは落ち着きましょ、肩が上がってるわよ?」
「.....」
完全に乗せられているなとわかった。椅子に腰を下ろして気持ちを落ち着かせる。確かにいつもより冷静さは欠けているし、よくよく考えてみればここは喫茶店。大声ではないとはいえそれなりのボリュームで話していた俺を見ているのは、同じく喫茶店で静かに満喫している主婦やサラリーマンや学生。急に恥ずかしくなり、誤魔化すように咳ばらいをしている俺の隣で優木あんじゅはクスクス、笑っていた。
「何が面白いんですか。俺が周りから痛い目で見られていることですか」
「違うわ、私が想像していた人よりもずっと人思いな男の子だと知って嬉しかっただけよ?」
「....」
「彼女たちのことになると冷静さを失うみたいね」
自覚はありますよ、と短めに答えて、俺は目の前に差し出された珈琲に口をつける。つけてはいるものの、それを口に中に含むことなく優木あんじゅが語りだすのを待ち続ける。そんな彼女はずっと優雅な振る舞いを崩さずに新たに、追加注文したガトーショコラにフォークを加える。いつの間に注文したのかは定かではない。
「俺に...何を話すつもりでいたんですか?」
「綺羅ツバサって子は、知っているわよね?」
「名前と顔だけ、ね」
「あの子に会ったことはあるかしら」
名前と顔だけと言っているのにどうしてこの人はそんな回答の決まった質問をしてくるのだろうか。もちろん表情を崩さずにガトーショコラを頬張る優木あんじゅ。
「....あるわけないじゃないですか」
「...そう」
瞬間、僅かに。
優木あんじゅのことを注意深く観察してないとわからないくらい、一瞬、ごく僅かに顔を顰めた。なんでアンタが顔を歪めるんだよ...。だけど、優木あんじゅのおかげで、俺は何かを見落としていることに気が付いた。だけどそれが何なのかはわからない。ずっと奥歯に挟まった何かがすっきり取れたような気分にさせたのは何だ?これまで幾度となく感じた見落としを、まさかこの人が握っているとでもいうのだろか。
「その子がさ、君に会いたがっているのよ。当然μ`sのみんなにも会いたがっていたわぁ」
「...何か隠してませんか?」
今度こそ、彼女の眉が動いた。
「何も隠してないわぁ。私は特に何も聞かされていないしぃ、ただツバサから『会いたいから連れてきて』としか言われてないものぉ」
「そう、ですか」
あくまで具体的なことは語らない優木あんじゅ。こっちに見向きもせずにただカップとガトーショコラを腹に収めることに手いっぱいで、というわけでもなく言いた
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