第38話 引っかかり
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敗は成功の基とよく謳われるが、それは自慢げに話すことでもないし話したいとも思わない。しかも見ず知らずの女性の話すとなるとなおのこと話したくない。どんなに有名なアイドルなのか知っているけど、人格に乏しいものを感じた。
「まぁそれはいいわ。本題はここからよ」
優木あんじゅもさほど気にしているような様子もなく紅茶に更に角砂糖を2,3個入れてかき混ぜる。うわ、甘ったるそうだ。甘いものを苦手としているわけではないが胃もたれ起こしそうな角砂糖の多さだ。いつかこの人糖尿病になるんじゃないかとどうでもいいことを考える。
「今度のラブライブ!の予選はもちろん出場するかしら?」
「あー」
優木あんじゅの問いに思わず言葉が詰まる。なにせ、9人のうち1人だけ不参加の意思を示すという現状であるため、『出る』とも『出ない』とも言えないのだ。立場と俺の人格上、強制なんてできるわけない。したところで自分の意思で参加するラブライブ!じゃないから意味なんてない。上品にあの甘そうな紅茶を啜る優木あんじゅを横に渋い顔をして俺はため息をつく。
「まぁ、現在検討中ということで」
「そうなのぉ?彼女たちならすぐに参加すると思っていたのに」
「何を知ったようなことを言ってるんですか」
「調べたもの」
「...そうですか」
調べた、とあっさり言うものの調べられる情報なんて限られてくる。ラブライブ!運営委員会が経営しているウェブサイトに掲載したμ'sの情報や通行人が見かけてサイトに上げた細々な情報。とはいえ、彼女達の表向きだけ知ったところで、それが第2回ラブライブ!に絶対参加するという確信には至らないはずだ。それをこうもあっけらかんと言うこの人の態度が鼻につく。
「どこまで知ってるのか知りませんが、俺の口からは言うことはありません。なので、俺はこれにて失礼します」
早急にこの場から離れたい。
その一心が強く、俺は残りの珈琲を口に含んで立ち上がる。代金は当然カウンターの上に置いて。
「待って。それだけじゃないのよ、まだ要件があるわ」
「要件ですか?俺にはそんなのありませんよ」
「むしろこっちの方が重要な話なのよ」
ぴくり。
その発言に頭が、体が、思考が止まる。今までの話が前座だとでも言うかのような発言に、ゆっくり俺は振り返る。その表情はさっきまでのお嬢様らしいものは無くて、鋭いナイフのような鋭さを帯びた目つきが、俺を刺していた。今までにこや花陽経由で観ていたA−RISEの映像のどこでも見たことが無いA−RISE、優木あんじゅの別の意味での本気の目。
「...マスターさん、珈琲もう一杯追加で」
俺はマスターに見向きもせず注文すると、優木あんじゅは表情を崩して足を組み直す。ハメられた...な
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