第百十八話
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「ん」
しかして目を背けたのは一瞬で、グウェンはこちらに深々と頭を下げた。肯定の意を示した短い言葉を発すると、グウェンは高速で頭を上げた。
「そ、そんなことより、このクナイ! なかなかいいじゃない……で、何コル?」
「ユルドだ、こっちは」
「コラ、あんたら増援にも来ずに何話してんのよ。……ってか、そもそもあんたら、何でわざわざ投剣をクナイ型にすんのよ。造るの面倒くさいんだけど」
クナイを弄り回しながら聞いてくるグウェンと、とりあえずそこは訂正しておく俺との間に、呆れ顔のリズが無理やり割り込んできた。そしてグウェンはその質問に対して、何を分かりきったことを聞いている――とばかりに、ポカンとした表情を見せていた。
「え? 何言ってんの? こっちの方がかっこいいじゃない」
「……あんたも?」
「ノーコメント」
「で、結局いくらなのよ?」
リズの追求をそっぽを向くことで避け、俺が良い空だ――などと現実逃避する姿に、どうやらリズは追求を諦めたらしく。クナイの値段を聞いてきたグウェンに肩を組み、ハンドサインで『お金』のマークを作ってみせた。
「今度、ルクスと一緒にお店に来なさい。ま、最初くらいはお友達価格で融通してあげる」
「あ……考えて、おくわ」
「おーい!」
今更ながら、すっかりリズのペースに乗せられていることに気づいたらしいが、グウェンはそれくらいしか言い返すことが出来ずにそっぽを向く。そしてOSS《サウザンド・レイン》で発射した武器の回収が済んだレインとユウキが、こちらに手を振って合流してきた。
「大漁だよ、大漁!」
「そんじゃ、さっさと戻りましょうか! ね?」
「は? ……もしかして、私に言ってる?」
目当てのアイテムである大漁の生肉が入手出来たため、もはやこのフィールドに留まっている意味はない。さっさと翼を展開し飛翔するメンバーだったが、大地に留まったままのグウェンにリズが声をかける。
「ルクスもいるわよ?」
「――もういいわよ。こうなったら、あのクナイのために着いてってやるんだから」
そう言ってグウェンは、諦めたような表情で溜め息一つ――最後に少し微笑んで、大地を蹴って飛翔する。そうしてユウキが「シャムロックの本部と競争しよ!」という提案をし、もちろん誰がぶっちぎりで一位を取ったのかは言うまでもない。
「え? もうお肉いらないの!?」
そうして大漁の生肉を抱えてシャムロック本部に凱旋した俺たちを待っていたのは、セブンから放たれた残酷な一言だった。というか、それにいいリアクションを返してくれたユウキだった。
「ユウキやお姉ちゃんたちが帰ってくるちょっと前にさ、サラマンダー領の人たちが来たの。
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