第百十八話
[9/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、当のルクス本人が気にしていないのだから、俺たちが怒るのも筋違いだ。
「それに、今は違うんだろ?」
「そう……だけど」
さらに言うなら、グウェンがあのPK集団たちの情報をリークしてくれたおかげで、俺たちはこうしてパーティーに勤しめている。それはグウェンがPK集団たちと袂を分かったことへの証左であり、その通りにグウェンは俯きながらも頷いた。
「何でリーダーやめたのか、聞いてもいいか?」
「……怖くなったの。みんな、本当にあのデスゲームに戻りたいって、心の底から言ってるみたいで……あいつが来てから」
身体を恐怖に怯えさせながら、グウェンはそう語った。あいつ――キリトが引導を渡したという、PoHを真似たSAO生還者の男。自らの仲間に引き入れる技術も真似ていたのか、グウェン以外は手勢にしていたらしい。
「私は……私はあんなデスゲームじゃなくて、またルクスと、楽しく遊びたかった、だけ……なの」
「……なら、そうすればいい」
そのまま徐々に、グウェンは感情を露わにしていく。あのデスゲームで親友になったルクスと、ただ遊びたかっただけ――という言葉を肯定すると、グウェンは驚いてこちらを見た。
「でも私……人は死なせたりなんかしてないけど、オレンジで……でもああしないと、あそこを生き残れなくて……」
「確かに許されることじゃない。ルクスだって……いや、みんな同じだ。でもこうやって、みんな遊んでる」
ラフィン・コフィンに属して攻略組の情報を探っていたルクスだけでなく、守れなかったことや死なせてしまったこと、忘れたいこと――自分たちSAO生還者には、そんなもの幾らでもある。グウェンだけではないが、グウェンとて例外ではない。
「ゲームを楽しんでいこう。もうここは、デスゲームじゃないんだ」
「ゲームを、楽しむ……」
その言葉に、グウェンは鳩が豆鉄砲を喰らったような表情になった。まるで考えてもいなかった、という言葉が相応しく、グウェンはしばし沈黙する。
「そっか。ここじゃ、人を襲わなくてもいいのね……」
あのデスゲームをオレンジプレイヤーとして生き抜いた脅迫観念が、グウェンとPK集団をSAOの亡霊として駆り立てていた。他人を犠牲にして自己本位に生きなければ、あの世界では死んでいたという脅迫観念だ。
「私、ルクスと楽しく遊びたい……いいの?」
「謝ってからな」
しかしここではモンスターに返り討ちにされようが、本当に死ぬなんてことはなく、わざわざプレイヤーを狙う必要はないのだ――と、そう気づいたグウェンは、『SAOの亡霊』から抜け出した。彼女からの問いかけに、冗談めかして返答しておくと、グウェンはばつが悪そうに目を背ける。
「……ごめんなさい」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ