第十八話 墓参りその十
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「自分達以外には噛みついてくる」
「そうしてくるですね」
「はい、危険な者達です」
まさにというのだ。
「ですが司教は彼等に暴挙を許していません」
「監視役ですね」
「ですが」
「若し司教がおられなくなると」
「その時はです」
「手綱を持つ人がいなくなり」
「何をするかわかりません」
こうマリーに注意するのだった。
「その時こそ」
「まさにですね」
「お気をつけ下さい」
「そうさせて頂きます」
是非にとだ、マリーも答えた。
「私も」
「その様に、では」
「はい、マイラ姉様とお会いする時は」
「彼等もいるかも知れませんが」
「頭の中に入れておくことですね」
「そうされて下さい」
「わかりました」
マリーは大司教に答えた、そしてだった。デューダー卿は彼の本分である外交のことから述べたのだった。
「法皇庁に手を回しておきますか」
「あちらに」
「はい、そうです」
まさにというのだ。
「そしてです」
「異端審問は、ですか」
「動けない様にしておきましょう」
こう言うのだった。
「彼等の主に話して」
「そうしますか」
「司教は優れた方です」
デューダー卿もこのことは認めていた、宗派が違い仕える主は違うが彼の資質は確かなものとして認めているのだ。
「それで異端審問官達もです」
「制御出来ますか」
「健在ならば」
「健在なら、ですか」
「人の一生はわからないものです」
「何時どうなるかわからないというのですね」
「はい、例えばです」
デューダー卿はあらたまってだ、マリーに述べた。
「王国にとって司教が邪魔と思いです」
「司教に対してですね」
「司教の飲まれるお水に何かを入れます」
その何かがどういったものかは言うまでもなかった。
「そうなればどうなるか」
「手綱を握る者がいなくなり」
「狂犬達は好き勝手に暴れだします」
「それを防ぐ為にですか」
「狂犬に対しては二重三重と備えをするものです」
微笑んでだ、デューダー卿はマリーに述べた。
「ですから」
「異端審問官達が仕えている法皇様にですか」
「お話をしておきましょう」
こう言うのだった。
「そして出来れば」
「出来ればとは」
「法皇様、若しくは側近の枢機卿の方々の弱みを握り」
そうしてというのだ。
「お話をしたいものです」
「お話をですか」
「そうです」
ここではだ、デューダー卿はにやりと笑ってみせた。それは外交を知っている者が策を考えている時の顔であった。
「若しくはです」
「味方になってもらう」
「弱みを握ることが不都合ならばです」
「別の手段で、ですね」
「味方になってもらうのです」
そうするべきだというのだ。
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