第36話『一致と相違』
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日の光は壁によって遮られ、薄暗さを呈する裏路地。
そこは通りの裏ではあるのだが、余程のことがない限り人は通らないだろう。
だから、今の状況を他力本願で切り抜けるには無理がある。
「下がって」
晴登は無意識の内に、ユヅキにそう言った。
彼の身体を手で制した後、一歩前に出る。
直感的だが・・・わかる。
今目の前に居る『いかにも』な佇まいの奴ら。もしかしたら、見た目だけの善人かも知れない。
けど、彼らの目。あの目に汚れが無いようには感じられなかった。
「ハルト…」
不安そうな声を出すユヅキ。やはり彼は彼らに怯えていた。
でなきゃ、急に止まる訳がないし、現時点で晴登の服の裾を掴んでいる理由もない。
晴登も背後でそれを感じ、いよいよ退けなくなったというのだが。
「んだよ、テメェ」
「……っ!」
威圧。晴登はそれに気圧される。
目の前の3人組はあくまで大人。ガキ大将だとか、そんな生ぬるいものではなかった。
「おい。このガキ、女連れて路地裏来てやがんぜ」
「マジかよ、この後そういう展開か?」
「けっ、良い御身分だな。ガキの癖に」
そういう展開? いや、どういう展開だ。でもとりあえず、貶されているというのは分かる。
そして、ユヅキを女子として見たのも気に入らない。見えなくもないけど。
結論、こいつらに関わると碌なことにならない。
「ユヅキ、一旦通りに戻ろ・・・」
晴登は逃げようとユヅキに提示する。でも、ユヅキは目の前に居なかった。
さっきまで服の裾を掴んでいたはずだ。
どこに、と辺りを見回すと、その姿はすぐに見つかった。
「なっ…!?」
晴登の後方。そこには新たな3人組がおり、その内の1人がユヅキを捕まえていた。
最初の3人組と同様、道に立ち塞がっている。
「6人組…!?」
「せいかーい」
晴登が見たままの状況を口に出すと、新たな3人組の方からそんな声が上がった。
見ると、その主はユヅキを捕まえている奴であり、口角を不気味に上げると次なる言葉を放った。
「大人しくしろよ? でなきゃ、お前の連れがどうなるか分かんねぇぜ」
「へへっ、コイツは高く売れそうだな」
月並みな脅し。それでも、晴登の行動を封じるには充分だった。
動けば…ユヅキと自分の安全の保障はない。
一応、晴登は常人とは違って魔術を使える。だが、この場合はどう使うべきだろうか。
相手はユヅキの首を腕で絞め、刃物を首元にあてがっている。つまりユヅキの身体が、奴らよりも前にあるのだ。下手に攻撃すると、ユヅキを巻き込むことになる。
「俺だけ逃げる、ってのは選択肢にねぇよな」
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