第36話『一致と相違』
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「どうだった? ラグナさん」
「行きたい場所ってよりも、会いたかった人みたいな主旨に変わってるけど…。優しい人だなって思ったよ。見た目は怖いけど」
「こう言っちゃ悪いけど、店の評判はそれが関係しなくもないんだよ。昔はもう少し優しい顔だったんだ」
「時の流れって怖いね」
今の場所はユヅキの家。外も暗くなってきて、いよいよ異世界での最初の夜を迎えようとしていた。
と言っても大層な事をする訳もなく、今はこうして駄弁っている。
「じゃあ夕飯を作るから、ハルトは風呂に入ってきなよ。沸かしてあるから」
「え、風呂とか借りていいの?」
「泊まるんだから、それは当たり前じゃないの?」
ユヅキの提案に対して疑問を返すと、疑問で返される。
確かに、泊まると言ったのは自分だし、風呂に入らないと気が済まないのも事実。
──って、あ・・・
「服どうしよ…」
「何か言った?」
「いや、何も! それじゃあ入ってくるね!」
半ば強引に会話を終了する晴登。
それは、自分の過ちに気づき、バレない内に済まそうという意思からだ。
──替えの服が無い。
それは異世界生活、というか旅行においても慢性的な問題である。とはいえ、わざわざ服を持って異世界に来るのもおかしな話だろう。
ではどうしたものか。ユヅキの服を借りるというのも、流石に図々しい気がする。
今日はまだ、汗とかはかいていなくて服も汚れていないからいいが、明日以降それが続くとも限らない。
・・・とりあえず、風呂に入ってから考えよう。
*
「いやー凄かったよ、風呂場」
「風呂場が凄いってどういうこと? ハルトの知ってるものとは違ったの?」
「うん、全然違う」
時は夕食。
出された料理は見慣れない食材ばかりであり、少し恐怖を覚えた晴登であったが、有害なものをユヅキが出すはずはないし、今は恐怖を忘れてユヅキと雑談をしている。
結局、服は同じ物を2回着ている。
さほど目立った汚れもなく、ユヅキからのツッコミもなかったのでその話題は放置しているが、いつ指摘されるとも限らない。
だから、その話題を出される前に、違う話題で誤魔化す…!
「この料理美味しいね」
「え、そう!? 人に食べて貰うって初めてだから、ちょっと心配だったんだ〜」
「いやいや、普通に美味しいって」
率直な感想を述べる晴登。
その傍ら、今の言葉が嬉しかったのか、ユヅキは頬をかきながら照れていた。
「ご馳走さま」
「お粗末様です。んっと…ボクも風呂に入って来ようかな」
晴登が皿を重ね、ユヅキに手渡す。そんな日常の行動さえ、今
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