第36話『一致と相違』
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時計が更に狭める。
全ての時計が針で同じ時を刻み、同じ動きをしていた。じっと見ていると、催眠術に掛かりそうである。
もし、この時計らが趣味で集められているだけとすれば、そこそこな変態がオーナーであろう。そして、そのオーナーとユヅキが友達だという事実があると少し引いてしまう。
よって、晴登はここを時計屋と判断したが大正解だった。
「あ、やっぱり…」
室内をズンズン進み、奥に向かいながらユヅキは呟く。
何がやっぱりなのかと見てみると、彼の向かう先にはレジが有り、そこに無精髭の似合う40歳位の1人の男性が椅子に座って熟睡していた。
ユヅキはその男性に近づくと、目一杯息を吸い込んで・・・
「ラグナさーん!! 起きて下さーい!!!」
レジの台を叩く音も合わされ、騒音とも呼べる声が店中に響く。晴登は慌てて耳を塞ぐも、時既に遅し。
鼓膜がガンガンと振動し、大音量な声が頭に木霊した。
お陰で声が消えた後も、晴登は耳を塞ぎ続けることになった。
「・・・うっせーな。もうちょい優しく起こせよ…ユヅキ」
「開店してるのに寝てるからですよ! 来て正解でした」
「へ? あぁ…今日お前は休暇か。・・・大体、こんな店いつ潰れてもおかしくねぇよ」
「ちょっと、それは困りますよ!」
騒音の後は喧騒。晴登は目でそれを感じる。あぁ、まだ耳がキンキンしている。
晴登は目視だけで状況の分析を始めた。
ユヅキの叫び声の中、何とか聞き取った「ラグナさん」という単語。つまり、この言葉があの男性の代名詞という事になるのだろう。
親しげに会話する二人を見て、図らずも先の仮説が頭を過る。だが、さすがにあの男性が変人ということはあるまい。イカツい顔はしてるけども。
晴登は頭の中が落ち着いたのを確認し、ゆっくりと両手を耳から外す。
「ところで、お前さんは誰だ?」
耳が開放されたと同時に、ぶっきらぼうな声が聞こえる。
その声の主であるラグナと呼ばれる男性は、鋭い目つきで晴登をじっと見ていた。
「えっと…三浦 晴登です」
視線に威圧を感じ、早くやってしまおうという意が溢れる自己紹介。
しかし男はそれを素直に聞き入れると、頷きながら言った。
「ハルト…か、良い名前だな。俺はラグナ・アルソム。この時計屋の店長だ」
そう言った後、凶悪な顔から想像も出来ないような笑みを浮かべたラグナ。
晴登は直感で『優しい人』だと判断した。
「ユヅキ、ハルトとはどういう関係だ?」
「どういうって・・・恩人かな?」
「恩人? そりゃ一体…?」
「実は・・・」
ユヅキはラグナの問いに、先程の事態を全て説明する。晴登は、その話で自分が
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