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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第153話 電気羊の夢?
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した、と言う事なのでしょう。

 もしかすると、前世での湖の乙女(長門有希)が同じような経験をした可能性も否定出来ないのですが。

「まぁ、あまり深く考えない事。どうせ、俺の記憶は何時の日にか、すべてオマエさんの物となるのやから」

 遅いか、早いかの差があるだけ。
 これは別にハルケギニアの聖戦の際に俺が生命を落とさなくとも、そうなる約束と成っている。約束は俺が今回の生命を終えた後の話。生命体であるが故に、何時かは必ず生命を終える時が来る。今の俺に取ってそれは遙かな未来の話……だと思うのだが。

 僅かな身じろぎひとつする事もなく、俺を見つめる有希。
 これは……躊躇い? 
 俺の言葉が終わった後も、変わる事なく、ただ俺を見つめるだけの彼女。但し、それまで発していた疑問と言う感覚は消え、代わりに何かを決意して、しかし、矢張り躊躇する。そう言う、堂々巡りのような感情が流れて来ていた。

 どうも良く分からないけど、先ほどの俺の答えの中に彼女の心の中に何か引っ掛かりのような物があったのでしょう。

「何か俺の言った内容に不審な個所でもあったかな?」

 聞いて良い……のか、どうかは分からない。もしかすると聞かない方が良いのかも知れない。ただ、俺が口にした内容で彼女が迷っているのなら、矢張り聞いて置きたい。
 ――俺はすべてに於いて正しい訳ではないのだから。

 一瞬、俺から視線を外す彼女。僅かに視線を落とし、源泉より注ぎ込み続けられるお湯を見つめた。

 僅かな空白。流れ行く時間と水音。
 湯船から溢れ出し続けるお湯。そして、視界の端の方で儚く散り続ける氷空に咲く花の光輝。今宵、世界は平和で美しいまま、時間だけがふたりを残して過ぎ去って行くかのようであった。

 成るほど、ダメだったのか。
 嘆息混じりに、そう考える俺。確かに、言葉の内容ほど大きくはないが、それでも僅かな落胆を感じているのは間違いない。おそらく、今は話せない内容に彼女は引っ掛かりを感じていたのでしょう。
 まぁ、女性は少々ミステリアスな方が魅力を感じる……と言う物。などと、少し自分を慰めて見るものの、矢張り、少しばかり落ち込む事に変わりはない。

 しかし――

「わたしの事。……あなたと出逢う以前のわたしの事を聞きたい?」

 涼やかな彼女の声。普段通りにしゃんと背筋を伸ばし、真っ直ぐに俺を見つめる今の彼女からは、既に戸惑いの色はない。
 彼女の僅かな身じろぎすらも湯面に小さな波紋を描き出し、その小さな波紋が永遠に注ぎ込まれ、あふれ出し続けるお湯にそれまでと違う流れを作り出した。

 成るほど、そう来るか。

「聞きたいか、それとも聞きたくないか。そう問われるのなら、正直に言うと聞きたい」

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