第6章 流されて異界
第153話 電気羊の夢?
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彼女に夢を見る機能は必要なかった可能性はある。
そう、確か以前に彼女はこう言っていた。
「そう言えば、本来、有希には人間のような睡眠は必要としていない。そう言っていたな」
そもそも眠る必要がないのなら、夜に寝ている間に夢を見る必要など存在しない。それに、人が夢を見る理由と言うのは実は良く分かっていないのだが、おそらく記憶が何らかの形で関わっている事は間違いないと思う。
眠っている間に行う記憶の整理作業。こう言う側面が夢を見る、と言う行為には確かあったはず。
そして、有希……人型端末たちは人間とは違う形で記憶を行う、と言う風に朝倉さんが言っていた。確かに、歴史の改変が繰り返される、ループするような世界の観察を行う以上、人間と同じ記憶の方法では時間が巻き戻った瞬間に、以前の時間軸での記憶や経験を失って仕舞うので、彼女らの任務の遂行に齟齬が発生する可能性もある。
流石に、歴史が変わって仕舞ったので、以前の記憶や経験はすべてパーになって終いました。てへぺろ。……では、自称進化の極みに達した情報生命体作製の人工生命体としては無様過ぎるでしょう。
ただ、それだと、先ほど有希自身が口にした言葉との間に矛盾が発生する。
それは……。
「せやけど、さっき有希は確か俺の傍らで眠る時には――」
――懐かしい夢に包まれる事が出来る。そう言ったよな。……と聞こうとした俺。しかし、直ぐに彼女の言葉に矛盾がない可能性がある事に気付く。
それは。そのキーワードは『俺の傍らで眠る時』と『懐かしい夢』。
先ず、懐かしい夢に関して。俺に出会う以前の彼女の人生に懐かしい思い出……と言える物があるのか、と考えると。
製造されたのが一九九九年七月七日の夜。それから三年の間、ずっと待機状態で過ごし、今年の四月から涼宮ハルヒの監視と、名づけざられし者からの関心を買う為の任務を開始。この待機任務の間で懐かしいと表現出来る思い出はないでしょう。ただひたすら、時間が経過するのを待つだけの退屈な時間だったと推測出来る。
その後、朝倉涼子暴走事件などを経て、当の名づけざられし者に因って、九九年の七月七日の夜に記憶だけが作成直後の有希へとインストールされる。
尚、どうやら、そのインストールに関しては、この十二月に起きるはずであった事件の際にもある程度の記憶がインストールされるらしく、その中には、その三年間の待機モードを繰り返させられるよりも辛いループを繰り返す歴史改竄事件が存在するらしい。
俺なら、この流れの中で魂が発生したとしても、直ぐに摩耗して消滅して仕舞う。それぐらい苛酷な人生だったはず。
俺と出逢った時の彼女の瞳が浮かべていた絶望の色は、決して、エネルギー補給の方法が断たれ、自分に残された時間が僅かしかない事に対する物だけ
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