暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第153話 電気羊の夢?
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のひとつひとつが思念体に取ってはとても重要で、その情報収集用の彼女らに物事を忘却するシステムを組み込む訳はないでしょう。

 折角、収集した情報を簡単に忘れさせる訳はありませんから。

「問題ない」

 そう考えた俺の思考を真っ向から否定するかのような有希。
 その表情は今、どう考えてもくちづけをねだって来た少女のソレではない。

 う〜む、矢張り、現実にここに居る俺と、有希の心の中に住む俺とでは、人間としてのスペックが違い過ぎるような気がするのですが……。
 気分的には、君の瞳に映った僕に完敗、と言うアホなボケしか出て来ない状態。

「あなたが読んだ本の内容やタイトルは大体、知っている」

 そして、このお互いが持っている情報の齟齬(そご)をどうやって埋めるべきか。お互いの生命を預け合う間柄で有る以上、相手の事を信頼するのは問題ないが、過大に評価し過ぎるのは、それはそれでかなり問題がある。
 そう考え掛けた俺に対して、少し意味の分からない言葉を続ける有希。

 ……と言うか、そもそも、俺の読んだ本を知っている?

 確かに、ふたりで共に過ごす時間はあまりテレビを見ない。そもそも、俺は集中するのに雑音を嫌う。まぁ、修行不足だと言われたら、確かにそうなのだが――
 ただ故に、有希と共に暮らすようになってからも和漢により綴られた紙製の書籍は常に手の中に存在していた。ふたりだけの部屋にただページを捲る音だけが聞こえる。静かで、平和な夜が続いていた。
 しかし、その読んで居た本の中には今回、有希が問い掛けて来た小説はない。
 更に、この世界に武神忍と名乗る俺が初めから存在していない以上、俺の実家の本棚の内容を彼女が知るのは不可能。俺がこの世界で生きて居た時代。水晶宮の長史として生きて居た時に読んで居た本は……おそらく未だ残されているでしょうが、その部屋に彼女が足を踏み入れたとも思えない。

 かなり訝しげに自らの正面に……。俺と同じ目線の高さに存在する有希の瞳を見つめた。
 その視線を受け、小さく首肯く有希。そして、一瞬、何故か躊躇うような感情を発した彼女が身体を動かそうとして……。
 しかし、矢張り思い止まり、俺の太ももの上に横座りとなった体勢は維持する。

 そして、

「本来、わたしには夢を見る機能は存在していなかった」

 これまでの話の流れに直接関係があるのか、かなりの疑問を禁じ得ない内容のぶっちゃけ話を口にする有希。その中にあるのはある程度の決意と、そして、負の感情。矢張り、今宵の彼女は告解を行う罪人の雰囲気がある。

 しかし……成るほどね。つまり彼女は電気羊の夢はみない……と言う事ですか。
 古いSF小説のタイトルに掛けて、そうぼんやりと考える俺。ただ……有希が言うように、本来の
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