おくりび山。過去との決別
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「とうとう着いたな」
「……」
サファイアにとってはシリアに憧れてきた懐かしき思い出の場所であり、ルビーにとってはシリアが出ていったせいで辛い過去の残った場所。そこに近づくたびにルビーの口数は少なくなり、今ではすっかり無口になってしまっていた。
「やっぱり……家族に会うの、怖いか?」
「……ううん、少し違うよ」
ルビーの声は、わずかに震えていた。
「ボクが旅に出てからここに戻るまでに予定よりも結構時間がかかっているからね。きっと家族はボクを責めるだろう。でも、そんなのは慣れてる。……君に失望されるのが、怖いんだ」
「俺が?」
「家族はボクの醜いところ、ダメなところ、良くないところ、いっぱい知ってる。サファイア君がボクを庇おうとすれば、容赦なくそれを口にする。それを知って……幻滅するんじゃないかなってね」
そんなことない、とすぐさま否定しようとした。でも、ただ口でそういうだけではルビーの恐れは解消されないだろうとも思った。だからサファイアは、ルビーのことを抱きしめる。
「大丈夫だ、ルビー」
「……!」
「勿論俺はルビーのこと知ってから……思い出してから、かな。まだ一年もたってない。ルビーの家族の方がルビーのこと良く知っているのは当然だし、俺がまだ知らないこともあると思う」
「……うん」
「だけど、これだけは断言できる。俺はルビーの家族よりルビーのいいところ、たくさん知ってるって。だってルビーのいいところを知ってたら、ルビーのこと否定なんてするわけがないんだから」
それは世の中に色んな種類の人間がいることをわかっていない子供の考え方だとルビーは思った。だけど、彼は彼なりに本気で自分の事を想ってくれているのが伝わってくる。
「……ありがとう。やっぱり君がおくりび山に来てくれてよかった」
ここに来て、自分を認めてくれたのが、こんなに真直ぐな人で良かったとルビーは伝える。ルビーから体を離して、代わりにサファイアの自分より大きな手を握った。
「もう大丈夫だよ。行こう、サファイア君」
「……ああ!」
いつもの調子で笑顔を浮かべたルビーにサファイアが元気に答える。いざ、おくりび山の頂上へ――
「ふん……やっと戻ってきたのかい。ホント、何をやっても出来損ないだね」
頂上につくと、一人の老婆が草刈りをしていた。その老婆は自分たち……いやルビーの姿を認めると、いきなり吐き捨てるように言った。サファイアが顔をしかめるが、すぐには口を出さない。ルビーが老婆に頭を下げる。
「ええ、ただいま戻りましたおばあさま。……相変わらずお元気なようで何よりです」
言葉には若干の皮肉が入っていた。老婆は草刈りをやめて、奥
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