サファイアの失意、ルビーの成長。
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ビーの言葉はまだ終わらない。
「だけどね、君がどんな選択をしても……ボクは君に、ついていくよ?」
「……え?」
「なんで驚くんだい?兄上を目指す夢が壊れた今でも、君は優しいサファイア君のままじゃないか。……君はどこまでも君なんだよ。兄上の真似事をするのは、君の本質じゃない」
「俺は、どこまでも俺……」
「そうだよ。だからゆっくり考えてみてほしいんだ。君のしたいことは何なのかをね」
ルビーは踵を返す。部屋から出ていってしまうのかとサファイアは寂しげな顔をした。
「大丈夫だよ、後で戻ってくる。……塞ぎこんでばかりじゃ元気も出ないだろう?何か元気の出る物でも持ってくるよ」
そう言って、部屋を出ていくルビー。サファイアは一人残される。
「俺のしたいこと……か」
サファイアは考え始める。壊れた夢を、新たに作るために。
「サファイア君?入ってもいいかな」
「ああ、いいよ」
約一時間後、ルビーはサファイアの部屋に戻ってきた。彼女がドアを開けた瞬間、ピリッとした爽やかな香りが鼻を抜ける。
「ご飯を持ってきてくれたのか?」
「ん。……そうだよ」
ちょっとだけ言葉に詰まるルビー。ワゴンを押して入ってくる。上に乗っているのは――サファイアの大好物、麻婆豆腐だ。ただし、いつも店で食べるようなものとは違う。豆腐はぼろぼろに煮崩れしているし、煮込み過ぎたのか見ただけでも相当粘度が高くどろっとしているのがわかった。一瞬怪訝な目をするサファイア。
「……これ、ボクが作ったんだ」
「やっぱり、そうなのか」
自分の隣に座るルビー。その手は野菜を切って怪我をしたのだろう。指に絆創膏が張ってある。彼女が作ったと考えるのが自然だった。
「でも、なんでルビーが料理を?」
「……言わせないで欲しいな。君に元気になってほしいからだよ」
少し恥ずかしそうなルビー。そう言われては食べないわけにはいかないし、拒否する理由もなかった。
「そっか。じゃあ……いただきます」
「うん、召し上がれ」
スプーンを手に取り、口に入れる。少し煮過ぎたせいで豆腐や野菜の食感はお世辞にも良いとは言えなかったが、別にサファイアは味覚審査員でもなんでもない。レシピを守って作られたそれは、塞ぎこんで何も食べていなかったサファイアにとってはとてもおいしく感じられた。
「おいしい、おいしいよ。ルビー」
「それは良かった」
平然を装って言うルビーも、どこかほっとした表情だ。サファイアは食べ進めながら、ルビーに聞く。
「指の怪我。大丈夫か?」
「これくらい、君の痛みに比べれば何でもないよ」
「……でも、良く作れたな
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