サファイアの失意、ルビーの成長。
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きそれも終わる」
今度は淡々と言うジャックに、シリアが険しい顔をして呟く。
「……させねえよ。あんたは俺が死なせない」
「やれやれ、困った弟子をとったなあ。ま、やれるものならやってみてよ。それじゃあ僕の話はおーしまい」
そう言うとジャックは軽い足取りで町の外へと歩き始めてしまった。シリアも、オオスバメをボールから出してその背に乗る。前回の温かみのある別れとは違って、サファイアとルビーを見下して一瞥し、飛翔する。
「サファイア君……僕たちも行こう。ポケモンを回復させてあげなくちゃ」
「……」
「サファイア、君」
サファイアは、今まで自分を支えてきた物が折れたように項垂れている。今まで見たことのないその様子に、ルビーはどうすればいいのかすぐにはわからない。
「……ほら、手を出して」
考えた後、自分の小さな手を差し出すルビー。サファイアは何も言わず、ゆっくりと握り返した。いつもは自分より大きく温かい手が今ではとても小さく、死者のように冷たく感じられた。
「行こう、ポケモンセンターに」
彼を立ち上がらせ、ボールにジュペッタを戻してやり歩いていく。自分は何が出来るか、何か出来るのだろうかと考えながら。普段自分を引っ張って歩いていたサファイアの足取りは、迷子になった幼子のようにふらついていた。
ポケモンセンターに戻り、一旦自分たちも休もうというルビーの提案で部屋を取った後、サファイアは真っ暗な部屋の中に塞ぎこんでしまった。回復したジュペッタがサファイアの負の感情を吸い取るが、そんなもので気持ちは晴れなかった。
もしサファイアが、自分たちを騙していたシリアへの怒りに駆られていたならあるいは元に戻ったかもしれない。だが、サファイアは優しかった。故に感情はシリアへの負の感情ではなく。今まで彼を目指していたことへの虚しさ、自分の中の軸がなくなった空虚さが胸を占めているのだ。
「ジュペッタ……ごめんな」
だからサファイアは謝る。もう何度も何度もだ。ジュペッタがなんと返事をしても、彼の心は動かない。
「今まで馬鹿な俺に付き合わせて、ありもしない夢を見続けて無茶させて、ほんとにごめんな」
ボールの中の手持ちのポケモン達にも同じように言葉をかけていく。
「ヤミラミも、守りが優れてるからってずっと痛い思いさせて、ごめんな」
「フワライドも、大爆発なんて覚えさせて、挙句の果てに何度も練習させたりして、ごめんな」
「オーロットも、せっかくついてきてくれたのにこんな馬鹿な奴でごめんな」
「シャンデラも、暴れたくて俺についてきたのに、ごめんな」
「みんなみんな……ほんとに、ごめん」
サファイアの蒼い瞳から涙
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