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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十六話 勇者の中の勇者
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きた! 化け物め、もう一度俺は後ろに、やや左後方に飛ぶ、少しは時間が稼げるだろう。

この男を相手に防御は有り得ない。下手に防ぐと打撃だけで吹き飛ばされるか、衝撃でトマホークを落としてしまうだろう。反って危険だ、防ぐのではなく避けるしかない。俺が標準よりも軽く短いトマホークを選んだのもそれが理由だ。少しでも身軽なほうがいい。

オフレッサーが今度は一歩踏み込んで一撃を送ってくる。狙いは俺の腹だ、飛び下がると同時に右側にサイドステップする。真後ろに下がるな! 相手を勢いづかせかねない。

オフレッサーが頭を狙ってきた。オフレッサーの身長では俺の腹を狙うより頭を狙うほうが遠くまでトマホークを伸ばせるのだ。耐えろ、此処をぎりぎりでかわせ! 目の前をトマホークが走り去る、空気が焦げる匂いがした。

この時を待っていた! 返しのトマホークが来るまでが勝負だ! トマホークをオフレッサー目掛けて投げつける。そしてオフレッサーの足元に飛び込む! 後ろから例の変形ナイフを抜きオフレッサーの足に叩きつける、獣の咆哮のような声が上がった。それを聞きながら前へ転がるように逃げた。

頭上で金属音が、続けて体の傍で金属音がする。更に前に逃げてオフレッサーを見た。オフレッサーは立っている。足元には叩き落された俺のトマホークがある。音を立てたのはこいつだろう。

オフレッサーの足の甲には俺が突き刺した変形ナイフが刺さっていた。この日のために用意した武器だ。握り手はあるがそこから先はアーチェリーのアローと同じだ。先端の矢尻の部分はくの字型になっていて抜けにくくなっている。無理に引き抜けば傷口が弾け痛みが増すだろう。


オフレッサーを一見したとき、まず目に付くのは体の大きさ、上半身の雄偉さだ。そしてトマホークの大きさを見ればその筋肉の凄まじさに、破壊力を想像し溜息を吐かざるを得ない。

しかしオフレッサーの本当の強さの源は上半身ではない、それを支える下半身にある。上半身だけの男なら、あのトマホークの返しは出来ない。トマホークの重みに引きずられバランスを崩す、一撃だけの男だろう。

強靭な下半身、特に親指の踏ん張る力、それに上半身のパワーが組み合わされた時ミンチメーカー、オフレッサーは誕生する。ならばそれを奪えばオフレッサーの恐ろしさは半減するだろう、それが俺の考えだ。


「やるではないか、リューネブルク」
「……」
俺は立ち上がり戦闘用ナイフを左腰から引き抜いた。此処からはこれが武器になる。問題はオフレッサーがどの程度動けるかだ。

ゆっくりと少しずつオフレッサーとの間合いを詰める。顎の下に汗が流れ落ちるのが分かった。僅かな時間しか闘っていないのに汗をかいている。いや、汗を感じる事が出来ただけでも少しは落ち着いてきたのか。

もう一
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