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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十六話 勇者の中の勇者
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フレッサー相手では仕方ないか、とは思ったがあまり面白くは無かった。思わず苦笑が出た。
「そんな顔をするな、これでも一応オフレッサー対策は練ってきたのだ。最初から俺が出るべきだったかもしれん」
「……」
「これからそっちにいく、待っていてくれ」
スクリーンを切ると装甲服を着た。そしてトマホークと戦闘用ナイフを用意する。トマホークはこの日のために用意した特注品だ。全長七十五センチ、重量四.五キロ。標準サイズより十センチ短く、一.五キロ軽い。戦闘用ナイフは二本、左右の腰に装備した。そしてもう一つ、変形のナイフを正面からは見えないように背後から腰に挿す。
司令長官の言う通り、落とし穴でも仕掛けたほうが良かったか? 否、これは俺とオフレッサーとの間で付けなければならない誓約なのだ。あの日、シュラハトプラットを食べた時から、装甲擲弾兵総監になりたいと答えたときから決まっていた事だ。避ける事は出来ない。
今になってみればベックマンとクラナッハを最初に出したのは間違いだった。最初から俺が出るべきだった。それが出来なかったのはやはり心のどこかでオフレッサーが怖かったのだろう。情けない話だ。
俺が装甲服を着て出て行くとオフレッサーの部下たちの間から興奮のような囁きが漏れた。一応俺もそれなりに評価されているらしい。
「オフレッサー閣下、ヘルマン・フォン・リューネブルク、推参。一騎打ちを所望!」
闘いを前にした昂揚した気分と馬鹿なことをしているという醒めた気分が心の中で入り混じっている。ヴァレンシュタイン司令長官は今頃目を剥いて怒っているだろう。だがこれで退けなくなった。
「遅いではないか、リューネブルク。臆病風に吹かれて出て来ないのかと思ったぞ」
オフレッサーが前に出てきた。俺との距離は五メートル、そんなところか。
それでも目の前のオフレッサーには圧倒されるような威圧感がある。でかいヒグマでも前に居るような圧迫感だ。思わず腹に力を入れた。呑まれるな。
「お待たせしたようですな」
「ふん、死ぬ覚悟は出来ているか、リューネブルク」
「そのようなもの、小官には必要有りません」
そうだ、死ぬわけにはいかない。あの男と約束したのだ、三十年後の世界を見ると。俺は必ず生きてあの男の元に帰る……。
「ほう、言うではないか、小細工をしたようだが俺には効かぬ。皆、手出し無用だ、リューネブルク、一騎打ち、受けてやるぞ!」
床を蹴るのと同時にオフレッサーはトマホークを一閃させて来た。後ろに飛び下がるのと同時に目の前を右から左にトマホークが走る。疾い! 一瞬で二メートル近く間合いを詰めてきた!
オフレッサーの体が流れ肩甲骨が見えた。そう思ったときには走り去ったはずのトマホークが逆方向からより一層スピードを乗せて俺を襲って
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