394部分:第五十四話 氷の世界と炎の世界その四
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第五十四話 氷の世界と炎の世界その四
「アテナなぞが何だというのだ?アーレス様こそは天皇ゼウスとその正妻へラから産まれた嫡子であられる。そのアーレス様が地上を治めて何が悪いというのだ」
「戯言を言うものだ」
カミュは今のレダの言葉を戯言として終わらせてしまったのだった。
「血筋を言うならばだ」
「何だというのだ。アーレス様の高貴を否定するというのか」
「それは否定しない」
しかし肯定もしないといった今のカミュの口調であった。
「しかしだ」
「しかし。何だ?」
「我等の神アテナもゼウスの子である」
「だが正妻へラの子ではない」
「その力はまさにゼウスより認められたものだ」
カミュが言うのはこのことだった。アテナは産まれる前に母メティスから産まれたならば父であるゼウスを凌ぐと言われゼウスに飲まれたうえでその額から出て来た女神だ」
ギリシア神話にある通りである。そうして飲まれたアテナはゼウスに激しい頭痛を与えそのうえで兄であるヘパイストスがゼウスの頭を割るとそこから産まれ出たのである。これがアテナの出生である。
「そしてメティスはゼウスの最初の妻だった」
「だからこそ何だというのだ?」
レダはカミュの今の言葉に不機嫌を露わにさせていた。自らが仕えるアーレスの高貴さを否定されたとみなしたからに他ならない。
「それでアーレス様の地上を治める義務を否定するというのか」
「義務か」
「そうだ、義務だ」
今度はこの話に至っていた。レダはアーレスがこの地上を治めることを当然のことを考えているのだ。これは狂闘士ならば誰もが持っている考えであるがレダはその考えが特に強いと言えた。
「アーレス様がこの地上を治められることはだ」
「そうした義務は聞いたことがない」
カミュは真顔でレダの今の言葉に返す。やはりその表情は変えない。そうして相変わらず氷と炎のせめぎ合いを続けているのであった。
「全くな」
「聞いたことがないのなら覚えておくことだ」
カミュの今の返答に臆することもなくこう返したレダだった。
「それでいいな」
「私にそれを言うつもりか」
「何度でも言おう。アーレス様こそが地上を治められる方だ」
まさに彼こそがというのである。
「アテナなどではなくな」
「血筋だけでそれをできるとは考えているわけではあるまい」
「その通りだ。アーレス様の御力を知ればだ」
言葉と共に再び口元に笑みが浮かび出た。今度のその笑みはアーレスに対しての心酔そのものを見せている笑みであった。
「アクエリアス、貴様もひれ伏すことになる」
「アーレスにひれ伏すことはない」
カミュはそれはないと言い切ってみせた。
「その前にアーレスを倒すだけだ」
「言うものだ。人が神を倒せるものか」
カミュの今の言葉は
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