巻ノ六十二 小田原開城その三
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「わしに関東を預けてな」
「関東を治めさせ力を削ぎ」
「大坂から離しましたな」
「そうお考えになられ」
「我等を東国に」
「そうなった、しかも城はじゃ」
家康の新たな居城も定められた、そこはというと。
「江戸城じゃが」
「確か太田道灌殿が築かれた」
「そうした城でしたな」
「随分と古い城だとか」
「まだあるのでしょうか」
「ある様だが」
しかしと言う家康だった。
「それでもな」
「相当に古ぼけた城でしょうな」
「駿府とはうって変わった」
「岡崎や浜松よりも」
「そうした城ですな」
「駿府なぞと比べられるものではあるまい」
家康は江戸という場所が彼の頭の中にこれまで殆どなかったことから四天王達に対してこう答えた。
「廃墟に近いやもな」
「実際のところは」
「そうした城ですか」
「そしてそこに我等を置き」
「力を政に向けさせてきますか」
「おそらくな、しかしわしは今はじゃ」
少なくとも今の家康はとだ、自分で言った。
「もう天下はじゃ」
「はい、関白様のもので」
「殿は諦めておられますな」
「小牧や長久手の時ならともかく」
「今は」
「そうじゃ、用心とはいえじゃ」
秀吉の考えを読みつつ言う。
「関白様もあまりなことをされる」
「殿、さすればです」
ここで本多正信が口を開いた、すると四天王達だけでなく本陣にいた四天王を含めて十六神将のほぼ全員が彼を睨んだ。
「我等はその八国をです」
「治めるべきか」
「はい、それならそれで」
「諦めてか」
「関東を治め」
そしてというのだ。
「民を養いましょう」
「関東の民達をか」
「どちらにしても政はおろそかには出来ませぬ」
「それはその通りじゃ」
「ならばです」
「政はすべきか」
「はい、おそら殿は大抵大坂にいることになるでしょうが」
若しくは都にだ、家康は関白のすぐ下にいる者なので必然的にそこにいる方が多くなり天下の政を執ることになるというのだ。
「しかし」
「領地だからじゃな」
「治めるべきですし」
「治めそしてじゃな」
「力を備えましょう」
「そうあるべきか」
「それならそれで、です」
領地が関東に移るのならというのだ。
「前向きになるしかありませぬ」
「それしかないか」
「そうかと」
「左様か、ではじゃ」
「はい、関東に入りましたなら」
「政に専念せよ」
こう家臣達に告げたのだった。
「よいな」
「はい、それでは」
「その様にしましょうぞ」
主な家臣達も主の言葉に応えた。
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