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魔術師にとって不利な世界で、俺は魔法を使い続ける
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ラリと見やり、その後プレイヤー全員に宣言した。
 ――狂気の混ざった眼力が眼鏡の反射に照らされてクッキリと浮かび上がった瞬間、俺はその次に告げられる言葉を否応なく予想した。
「君たちの視界の左上角から伸びるゲージが見えるだろう。それがHPゲージだ。君たちのライフラインであり、無くなった瞬間――君たちは本当に、死ぬ。この世界から脱出できる条件は唯一つ、100並ぶ大陸の一つ一つを制覇し、最後に待ち受けるラスボスを倒す事だ!最後に君たちの生命線を一つ、教えておこう。ウィンドウの開き方は右手人差し指・中指を二本揃えて目の前の空間をタッチ、それだけだ。モーションセンサーによってメニューが開く。それでは、長らくお待たせした!これにて、ガルドゲート・オンラインのチュートリアルを終了する!デスゲームの開幕だ!」
 声高らかに宣言したその刹那、湊の姿がかき消えた。おそらくボイスチャット・コマンドでも仕込んでいたのは明らかだが、結果としてそれに気付くまでにそこそこ長い時間を要してしまった。
 ――5万人近くの人間の阿鼻叫喚が、俺の脳を完全に占拠した事によって。
 間違いなく生まれてから最も大音量を聞いたが、鼓膜には何の異常もない上、耳鳴りさえ発生しない事に凄まじい違和感を感じる。どれだけ損傷しても何の問題も無い、という湊の言葉は本当のようだ。
 などと場違いな考えを巡らせている内に、左腕が強く引っ張られた。そのまま未だに混乱の巷になっている人の円を出るまで走る。引っ張ったのは予想に反さずゼロだが、俺とは違い切羽詰まった顔をしている。
「お前は重度のネットゲーマーだな?そうだな?」
 早口で尋ねられるこの状況ながら失礼な質問だな、と先程までの俺なら思っただろうが、ゼロの表情の真剣さから、思わずコクコクと肯く。
「ああ、そうだ」
「条件クリア。なら分かるな?この後俺達はどうすればいい?」
 今までなぜか全く冷静さを欠かなかった俺は、ここにきてようやく事の重大さに気付いた。これは大規模な殺人事件に近い。身代金目的か、政府に恨みがあったのか、それともただの愉快犯か……とそこまで思考を回した所で狂症の影響だと気が付く。頭脳が堂々巡りを繰り返す事に嫌気さえ感じる。
 何をすればいいか?そんな事はもう決まっている。ひたすらにモンスターを狩ってレベルと金を稼ぎ、自己を強化し、このゲームをクリアする事。それに尽きる。それができなければ、ただただPSを上げ、低パラメータでもモンスターに立ち向かえるようになる事……。
 そこでふと気付く。それは自殺行為だ。今、俺達のHPは、現実世界の生死と密接にリンクしている。0になった瞬間、何らかの手段によって俺は殺されるのだ。その方法を知っていない分気持ちは楽だが、逆に死に方が分からず恐ろしい。
 では何をすべきか……俺は一つの結論に
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