湯煙の町へ
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キンセツシティを出た二人は、ロープウェイに乗り、デコボコ山道に到着する。お婆さんにフエン名物だという煎餅を売ってもらったので、早速一枚食べてみた。
「辛っ!?」
「これは・・・確かに状態異常も吹っ飛びそうだね」
二人して水を飲むが、なかなか辛さは収まらない。口の中をヒリヒリさせながら、山道を降りていく。名前の通り段差が激しく、なかなか歩きづらい。
「ルビー・・・降りれるか?」
「君が手を引いてくれるのなら、なんとかなると思うよ」
「わかった」
一際大きな段差のところでサファイアは先に飛び降りる。そして上のルビーに手を伸ばした。二人の手が触れ合う。
「よいしょっと」
ルビーがストンと上から降りる。サファイアは手を離そうとしたが、ルビーは離さない。
「・・・ルビー?」
「いいじゃないか。このままでも」
ね。と言って微笑みかけてくるルビーの表情は、なんだか脆く儚く見えて。手を離すことが憚られた。ロープウェイのときも感じたが、キンセツシティを出てからそういう顔をするようになった気がする。
「あ・・・見てサファイア君」
「どうしたんだ?」
ルビーが向こうを指差す。サファイアがそちらに目を向けると、頭に真珠のような綺麗な珠を乗せたポケモンーーバネブーの群れがいた。段差のある山道を器用にピョンピョンと跳ね移動しているのだが・・・その群れの一番後ろの一匹が、段差を登ろうと跳び跳ねて、思いきり壁にぶつかった。他のバネブー達がブーブーと騒ぐ。明らかに文句を言っているようだった。
「上手く登れないみたいだな」
「そうだね・・・」
登り損ねたバネブーは何度か登ろうと挑戦するが、何度やっても上手くいかず。ついには群れに置き去りにされてしまった。
「ぶう!ぶう・・・」
それでも残されたバネブーは何度も何度も挑戦する。そして同じ数だけ失敗した。
「ねえ・・・サファイア君」
「どうしたんだ?」
「あの子、助けてもいいかい?」
「えっ?」
ルビーはバネブーを見て、かつての自分を思い出す。何度やっても親達の期待に応えられない弱い自分と・・・目の前のバネブーは同じに見えた。
「助けたいなら、いいんじゃないか」
「そうするよ」
ルビーは何度も同じ事を繰り返すバネブーの後ろからそっと近付く。そしてサマヨールを繰り出し、小さく「朧重力」と呟いた。サマヨールが、バネブーの真上に吸い寄せる重力場を作り出す。
すると跳び跳ねるバネブーの体が宙に吸い寄せられーー結果として普段より高く飛び上がり、段差を登る事に成功した。ルビーとサマヨールの存在には
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