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豹頭王異伝
新風
弁論の魔術師
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思うのだが納得して貰えるかな」

「…わかりました、私の負けです。
 御心の儘に、聖王陛下《アル・ジェニウス》。
 アルド・ナリス様、我々は何処までも貴方に付き従います。
 我が忠誠を永遠に御身へ捧げます、我々を御導きください」

 頑固一徹の最年長者ルナン聖騎士侯も折れ、参列する全員が納得して唱和。
 ルギアの眉が更に跳ね上がり、レイピアの如く尖った視線で聖王家の魔術師を刺し貫くが。
 前クリスタル大公の瞳が煌き、上級魔道師ヴァレリウスは雄弁な溜息を吐いた。
 解放軍の最高指導者が輝く笑顔を披露した後、一同は部屋を退出し部下達の許に戻る。

 無言の儘、凄絶な一睨みを投げ足音も荒く立ち去る聖騎士伯リギア。
 微かに頬を緩める物静かな参謀長と対照的に、公然と唇を緩め満面の笑み。
 パロ解放軍の最高指導者は悪戯っ子を装い、パロ魔道師軍団の指揮官を無視。
 瞳を煌かせ挑発する闇と炎の王子に対し、雄弁な溜息を吐き灰色の瞳が瞬いた。
「貴方の様に悪知恵が廻る口車の天才、口先の魔術師は見た事がありませんね。
 改めて脱帽しますよ、パロ聖王国史上最高、いえ、中原一の詐欺師様」

「否定はしないが見た事が無いとは心外だな、君は1度も鏡を見た事が無いのかね?
 むしろ非常な賛辞と受け取り有難い、最高の褒め言葉と御礼を云おうかな」
 巧みに弁舌を操る魔術師に最大の効果を発揮する方策は、沈黙を貫く事だが。
 口から先に産まれたと噂され、イェライシャにも指摘された本性とは相容れぬ。

「貴方って方は、どうしてそう、人を騙して喜ぶ癖を止められないんですか!
 ゴーラ軍に乗り込んだら酷い目に遭いますよ、リンダ様は反対されてませんか?」
「私から直接、彼女に話して置くから余計な気は使わなくて良いよ。
 忠告は有難く受けて置くが君も大変だね、詰まらない心配していると禿げるよ」

「放っといてください、リンダ様を御呼びしますから御説明はされた方が良いですよ。
 私はさっさと失礼して情勢を確認します、御話が済んだら心話で御呼び下さい」
「夫婦水入らずの時間を作ってくれて、心底から感謝するよ。
 アムブラの件は私の指示だった、君には何の関係も無いと説明するよ。
 誤解を解いて置くから、もう一度、リギアに告白してみたら?
 結婚式を挙げる事になれば誠に喜ばしい、仲人は喜んで引き受けるからね」

「言った私が馬鹿でしたね、もう過ぎた事です、ほじくり返さないで下さい。
 一言毎に馬鹿を言うのは本当に、おやめになった方が良いですよ。
 時間の余裕が有り余っている訳では無い、と思いますがね。
 余計な事を喋る余裕が無かった以前の方が、静穏で良かったんじゃないですか。
 いえ、何でもありません、我が魂の主よ、御心の儘に。
 
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