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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
第百三二幕 「君はまな板の凄さを知るだろう」
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鈴は静かに自分の胸に手のひらを置き、はっきりとした声で告げた。

「あのペンダントは今、私の心臓のなかにある。ううん、そもそも『このペンダントが私の心臓の代わりになってる』。そしてパパはそれを知ってて私に黙ってたんじゃないの?いい加減待たされるのも焦らされるのもイヤなの!白状してよね……!!」

 こちとらあの謎の威厳ボイスに散々夢の中でつき合わされ疑問ばかりが増殖しているのだ。いい加減に真実とやらを知って摩訶不思議な突然変異を起こしたIS含めた謎を解明したい。もう鈴は食べ物になんて絶対負けない!……今「即負けそう」って言った奴出てきなさい。シバくから。

「………これは。これは、当時の状況や人に聞いた話、お前の発見された当初の状況などを複合的に判断して繋ぎ合わせた話だ。正直、俺もいまだにどこまでが正確なのは判断しかねている。そんなツギハギだらけの話でも……構わないか?」
「なんでもいい。ただ、嘘と隠し事だけはやめて」
「分かった……どうせいつか、こんな日が来ると思っていた」

 遠い目をした父親――鐘音(チュンイン)は、昔話のように過去を語り始めた。



 = =



 もともと、日本で暮らすことを決めたのは俺だった。
 だから妻の花琳(ファリン)が上手く日本に馴染めなくて苦労したのも、そのあとに鈴音がイジメを受けてしまったのも、ある意味では俺のせいだった。それでも俺と花琳は子供の為に、なんとか上手くやっていた。

 だが、なかなか世の中ってのは上手くいかないものだ。
 ISの登場に伴う女尊男卑の台頭は世間を変えていき、それは俺と花琳の歯車をも少しずつ歪めていった。あとは――些細なきっかけと、たまった不満の決壊。鈴のいないところで散々喧嘩して、言い合って、最終的に俺たちは仲違いした。中国に戻るという点では合意したが、花琳は戻り次第離婚すると怒鳴られた。
 こういう時、男は駄目だよな。謝ってももう遅いぐらいに花琳の決意は固くて、しかも俺が原因なのは間違いない事実だった。俺は頷くしかなかった。唯一鈴音の親権だけは悩みに悩んだが、俺が譲った。これからの世の中、男で一つで娘を育てるってのは余計に鈴音に負担をかけると思ったからな。

 日本にいる間はなんとか取り繕ったが、中国本土に戻ったらもう駄目だ。互いに鈴音の前でムキになって喧嘩して、鈴音にそれをどう伝えるかなんて当たり前のことでさえ大喧嘩した。

 もしそこに不幸があるとしたら、俺達の言い争った場所が空港のすぐ近くのビジネスホテルで駅が近かったこと。そして鈴音、お前がその言い争いを聞いていたであろうことだ。お前は突然自分の財布と荷物だけ持ってホテルからいなくなった。俺たちは直感的に「話を聞かれてしまった」と思った。

 どんな気持ちだったのか……お前
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