第一章 天下統一編
第一話 聚楽第
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いた。先程までと違い人を値踏みするような目はしていなかった。
「虎之助と市松にお前の爪の垢を煎じて飲ませたいくらいじゃ。戦における兵站の重要性を疎かにする奴が多すぎる。佐吉もあの性格じゃからな」
秀吉は俺の話を感慨深そうに聞き愚痴りはじめた。
「卯之助、お前なら佐吉と気が合うじゃろう。頑張るのじゃぞ」
秀吉は笑顔で俺を見た。石田三成と気が合うとか死亡フラグ満載だろう。俺は徳川家康と争う気持ちはさらさらない。面従腹背の腹黒狸、徳川家康と相対するなんて危険すぎる。
「殿下、お心配りを無碍にしないために頑張らせていただきます」
俺は努めて笑顔で秀吉に礼を述べた。すると秀吉も満足そうだった。
小姓で初知行が千石とはな。他の小姓にやっかみを受けないか心配だ。
「卯之助、お前は運がいい。あと二月もしないうちに天下の大戦があるぞ」
秀吉は砕けた態度で俺に話かけてきた。しかし、その瞳は眼光が鋭い。
「大戦でございますか?」
俺はおずおずと聞いた。すると秀吉は口元に笑みを浮かべ頷いた。彼は俺との話を楽しんでいるようだった。
「大戦じゃ。敵は誰か分かるか?」
今年は天正十八年。この時期の大きい戦となると、北条を滅ぼす小田原征伐しかない。奥州は関東を征圧しないといけない。それに北条が敗色濃厚になれば、奥州の大名も大方は豊臣に降るはずだ。歴史がそう証明している。
秀吉は俺の答えを待っていた。彼の瞳は俺の答えに期待しているようだった。
「殿下のご威光により天下の静謐は目前です。残る敵は関東の北条。北条を下せば、奥州は自ずと降ることでしょう」
秀吉は俺の答えを聞くと機嫌良く笑った。
「卯之助、たまげたぞ。本当に知恵が回りよる」
秀吉は俺に失礼な物言いをしてきた。北条を攻めるなど豊臣配下の武将なら大抵知っていることだろう。義父も普段からよく口にしていた。
「父、小出吉政が日頃から北条攻めを口にしておりました。そのお陰で殿下の問いに答えることができただけです」
大げさに感心する秀吉の俺への評価を訂正した。
「言いよるわ。北条と戦をすることまでなら答えられるであろう。だが、お前の歳で官兵衛の狙いを言い当てる奴はいない」
秀吉は鋭い目で俺を見ていた。失言してしまった。調子に乗って余計なことまで喋ってしまった。
「お前が考えたことか?」
秀吉は俺を冷たい目で見ている。その目は「嘘をつくことは許さん」と語っていた。俺は生唾を飲み込んだ。
「はい」
俺は秀吉のいい知れない圧力に素直に答えた。この場で嘘をつくことは得策ではない。俺の言った言葉を思いつく人物は俺の近親者にはいない。義父は馬廻といえ、秀吉から小田原征伐
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