第一章 天下統一編
第一話 聚楽第
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小姓として召しだせと義父に申しつけた。俺の扱いに困っていた義父は渡りに船だったことだろう。
「この小出俊定。浅学非才の身でございますが、関白殿下の御ため謹んでお仕えさせていただきます」
俺は平伏したまま滑舌の良く所信を述べた。万事滞りなく挨拶ができたことに俺は内心安堵していた。だが、秀吉からの返事はなかった。待てども秀吉からの返事がない。俺は自分が気づかない失態を犯したしてまったのかと焦り、秀吉と対面してからの俺の行動を脳内で反復した。だが、何度も考えても失態の形跡はなかった。
「摂津国豊島郡に千石の知行をやろう。屋敷を宛がうゆえ、明日より出仕致せ。治胤、案内してやれ」
俺が平伏したまま頭の中で考えを巡らせていると秀吉が声をかけてきた。秀吉の声はおだやかな雰囲気だった。俺は顔を上げ秀吉のことを見る。
「殿下、過分のご厚情心より感謝申し上げます。粉骨砕身励ませていただきます」
俺は礼を述べ平伏した。そして、俺は頭の中で秀吉の言葉を反芻していた。
秀吉から貰った俺の知行が予想外だった。俺の予想だと知行は五百石と見積もっていた。その理由は俺と同じく秀吉に出仕している実兄・木下延俊が最初に与えられたのが五百石だったからだ。それをはるかに超えている。信長流の実力主義で家臣を評価する秀吉が親類だからと過度に手心を加える訳がない。
しかし、千石の知行はかなり好待遇だ。俺みたいな何も実績もない者に初めから千石を出すなんて何かあるので無いかと勘ぐってしまう。くれるというなら貰っておこう。
「卯之助、お前は佐吉の下で働け」
俺は秀吉の言葉に頭が固まった。佐吉の下で働けだと。
一番関わっては不味そうな人物の名に戸惑ってしまう。
「殿下、佐吉様と言いますと」
「佐吉じゃ。お前も知っているじゃろう。石田治部少輔だ。あやつは武は不得手だが賢く有能な男だ。お前も多くを学ぶことができよう」
最先から最悪だ。これは史実にあったことなのか。小出俊定は影薄くて俺もあまり詳しくない。丹波一万石の小身大名で、関ヶ原の戦い後に没落し小早川秀秋の家臣になり秀秋が死ぬ時期に変死したということしか知らない。関ヶ原の戦い後に没落したということは西軍側に立ったのだろう。小出家自体が西軍だったが、義父の弟・小出秀家が東軍に属したことで没落は回避できた。小出俊定は改易され没落したがな。その後も小出家で面倒を見て貰えなかった辺り、小出家と小出俊定の関係を象徴していると思う。
「石田治部少輔様は九州征伐で大軍の兵站を維持された方と聞いております。そのような有能な方の下で働くことができるとは嬉しく思います」
秀吉の命令である以上、あからさまに嫌がる訳にもいかず俺は心と裏腹に笑顔で秀吉に礼を述べた。秀吉は俺の返事を満足に聞いて
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