第一章 天下統一編
第一話 聚楽第
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てみせる。そのためには出世して徳川家と懇意にしなくてはいけない。
「小出殿、こちらで殿下が参られるまでしばしお待ちください」
治胤は立ち止まり俺を部屋に案内した。それはだだっ広い畳敷きの部屋だった。俺の部屋は十二畳あるが、その十倍以上はある。あまりに広すぎて落ち着かない。
俺はそわそわしながら部屋に足を踏み入れた。部屋の一番奥に視線を向けると一段高くなった区画があり、一見するだけで高そうな掛け軸と成金趣味な脇息と座布団が配置されていた。あそこに秀吉が座るのだろう。
俺は部屋の入り口から数歩奥方向に歩いた場所に腰を下ろし平伏した。義父・小出吉政から一ヶ月ほどみっちりしごかれたから所作は問題ない。色々あるが義父はいい奴だ。ちゃんと指導しないと、義父が恥をかくことになるからだろうが、それでも感謝はしている。
「小出殿、殿下のおなりです」
俺は緊張した心持ちになるが平伏した体勢を保った。しばらくすると衣擦れの音が聞こえたが、俺はそのままの体勢で待った。
「面を上げよ」
男の厳粛な声を耳にした。その声は聞き慣れていた。俺は腹に力を入れ返事をし体勢を起こした。俺の視界には小柄で不細工な中年が座っていた。この成金趣味な着物に身を包む中年は豊臣秀吉である。叔母・寧々に会いに行った時、何度か会ったことがある。でも、小出家に養子に入ってからは秀吉と寧々とは会っていない。
「卯之助、元気そうだな。今年でいくつになる」
秀吉は笑顔で俺に気さくな態度で声をかけてきた。だが、彼の目は笑っていない。人を観察する。いや、人を値踏みするような目つきだった。
「ご健勝の様子を拝し祝着至極にございます。殿下、今年で十二歳です。元服し小出俊定と名乗らせていただいています」
俺は滑舌の良い口調で秀吉に挨拶した。秀吉は俺の返答に動きを止め困惑しているようだった。
「たまげた。卯之助、立派になったな。『男子三日会わざれば刮目して見よ』というが真であるな」
秀吉は感心した様子で俺のことを褒めた。しかし、秀吉の目は相変わらず笑っていない。
「お前のことを治胤から聞いた時は半信半疑であった。身内に賢き者が居ることは嬉しい限りじゃ」
秀吉は上機嫌に笑った。
「殿下、お褒めいただき光栄の至りでございます。しかし、所詮は十二の小僧でございます。浅学非才の身にございますれば、ご先輩方にご指導いただき多くのことを学びたいと思っております」
俺は殊勝な口調で秀吉に対して平伏した。
「殊勝な心がけじゃ。今日から小姓として儂に仕えよ。従甥とて特別扱いはせん。精進して奉公するのだぞ」
秀吉は厳粛な声で俺に言った。俺が聚楽第に来た理由は秀吉に奉公するためだ。秀吉は俺が元服したことを機会に
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