第十八話 墓参りその三
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「問題はマイラ姉様ね」
「あの方ですか」
「マリー姉様から歩み寄っていたのね」
「その様です」
「やはりそうね、けれど」
祖国にいた時のことを思い出しつつだ、マリアは言うのだった。
「マイラ姉様は歩み寄らず」
「その様です」
「やはりそうね、けれど」
「それでもですか」
「とりあえずはいいわ」
「とりあえずですか」
「まずはね、けれど」
セーラ程ではないがわかっていてだ、マリアは言ったのだった。
「これからも何かと起こるわね」
「お二方の間には」
「セーラ、いえ半島の国の太子妃が言っていたわ」
セーラの今のことを思いつつ言った。
「波風は常に立つもの、どんな物事でも」
「だからですか」
「そう、だからね」
「これからもですか」
「何かあれば」
その時はというのだ。
「また私に知らせて、いえ」
「いえ、とは」
「何でも知らせて」
「お二方に関することは」
「そうして、そして何かあれば」
まさにその時のことをだ、マリアは念頭に置きつつ言うのだった。このことはセーラと全く同じであった。
「私に知らせて」
「わかりました、それでは」
「お願いするわね」
「その様に」
侍女も答えた、そしてだった。
侍女は去った、するとだった。
彼女と入れ替わる様にして黒い濃い髭と髪を持つ恰幅のいい大男が後ろからマリアのところに来た、そうして。
マリアに対してだ、雷の様に大きな声で言ってきた。
「あの侍女はそなたが祖国から連れて来た侍女だったな」
「はい」
マリアは自分の横にまで来た大男、この国の新王でありマリアの夫でもある彼に対して確かな声で答えた。
「左様です」
「そうか、出来た女か」
「私が信頼している侍女の一人です」
「それは何よりだ」
王は妻の言葉に頷いた、そして。
マリアに顔を向けてだ、こうしたことを言った。
「それでだが」
「はい、今日のことですね」
「私はこれから狩りに出る」
宮廷の者達と共にというのだ。
「そして昼に戻るが」
「お昼に、ですか」
「昼食は共に摂ろう」
こうマリアに言うのだった。
「いつも通りな」
「ではお帰りをお待ちしています」
「是非な、そして昼食の後でだ」
王はさらに言った。
「政だが」
「その時もですね」
「そなたには隣にいてもらう」
「王妃として」
「王妃とは何か」
王はその大きな黒い目をマリアに向けつつ言った。
「王と常に共にいてだ」
「そのうえで、ですね」
「あらゆることを行うものだ」
「だからこそ」
「午後はそうしてもらう、出来ればだ」
「狩もですね」
「共にして欲しいが」
王は眉を曇らせた、その黒く太い眉を。
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