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Three Roses
第十八話 墓参りその一

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                 第十八話  墓参り
 マリーとマイラが会ったことをだ、セーラは嫁いだ半島の王宮において聞いた。そのうえでまずは微笑んでこう言った。
「いいことです」
「そしてです」
 報告をする半島の貴族の一人がセーラにさらに話した。
「お二人の父王、そして弟君であられた先王のお墓にもです」
「お二人で、ですね」
「参られるとのことです」
「そのこともいいことです」
 セーラは微笑んだ、その話にも。
「実に」
「はい、お妃様にとっても」
「お二人のことはずっと気に病んでいました」
 この国に嫁いでからもというのだ。
「非常に、ですが」
「このお話を聞かれてですか」
「少し安心しました」
「少しですか」
「はい、まだお二人の間には溝があるでしょう」
 こう言うのだった。
「深く広く」
「そうなのですか」
「マイラ姉様は決して悪い方ではないのですが」
 語るのはまずは彼女にすいてだった。
「ですが」
「それでもですか」
「頑な方です」
 それ故にというのだ。
「その溝はまだ深く広いでしょう」
「どうもです」
 貴族は畏まってセーラに述べた。
「あの方は旧教への信仰が非常に強く」
「そして、ですね」
「はい、お妃様の言われる通り頑なな方ですね」
「それがあの方の困ったところです」
 マイラを知っているが故の言葉だ。
「ご自身が側室のお子ということを意識され」
「それが為にですね」
「私達、特にマリー姉様に対して心の垣根があります」
「だからこそ」
「あの方と会われようとしなかったので」
「そして今もですね」
「そう思っていました、ですが」
「会われてです」
 そしてと言うのだった。
「そのうえで」
「お墓参りもですね」
「されるとのことです」
「まずはそこからですね、しかし」
「まだ、ですか」
「溝が深いので」
 どうしてもだ、セーラはそのことが気になって言うのだった。
「どうしてもです」
「これからのこともですか」
「安心出来ません」
「そうなのですか」
「また何かありましたらお話して下さい」
 セーラは貴族に頼む様にして言った。
「是非」
「ではまた」
「お願いします」
 セーラは貴族に言った、そしてだった。
 夫である半島の太子のところに赴いてだ、彼に話した。
 茶色の髪に面長で整った顔立ちをしている、灰色の目は何処までも見る様だ。その彼に対して言うのだった。名をエドワード=キャスリングといいこの国の第一王子にして太子である。人格円満にして学問好きで評判の人物だ。
「マリー姉様とマイラ姉様のことですか」
「お話は聞いています」
 穏やかな、だが何処か他人行儀な調子でだった。太子はセーラに応えた。
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