第十章 仮想世界
第8-3話 上条と八舞姉妹
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我が愚兄よ……すでに手は打っておる」
夕弦「譲渡。これです」
と言われて上条は夕弦からチケットらしきものを受け取った。そこに書かれていたのは……
上条「水族館の割引券?」
耶倶矢「言うとおりよ愚兄……我の右手に宿る竜の化身により召喚された――」
夕弦「要約。デパートのくじ引きで当たりました」
耶倶矢「ちょっ!勝手に言うなし!」
上条「そ、そうか……」
正直な感想を述べると、上条は水族館があまり好きではない。
理由は持ち前の不幸さにある。
厚いガラス越しにこちらを見てくる魚たちは絶対目を合わせてくれないし、ガラスの方に近づけばそれに応じて魚たちは散っていく。イルカやアシカのショーに行けば必ずどこかで失敗するし、イルカがジャンプした時の水しぶきは必ず自分のところにかかる。
子供の頃に一度だけ両親と行ったことがあるのだが、そんな散々なことがあって以来一回も行ってない。
なので人生で二度目の水族館になるのだが……
上条「…………水族館かぁ」
どうも乗り気になれない。
二人は上条の表情を見て少し複雑な気持ちになっていた。詳しくは聞いてないから事情は分からないが、恐らく上条の不幸が関係して昔何かあったのだろう。
でも。
耶倶矢「……昔に何があったのかは知らないけどさ、昔は昔、今は今じゃん」
夕弦「首肯。耶倶矢の言うとおりです。それとも私たちと水族館に行くのは嫌ですか?」
上条「いや、そういうわけじゃないんだけど……」
上条は少し迷ったが、せっかく誘ってくれた二人を用事もないのに断るのは少し罪悪感が生まれそうだったので、しぶしぶ了承した。
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三人はあまり乗る機会がない電車に乗って隣町の水族館に来ていた。
高さはビル四階分くらいあり、広さは東京ドーム三個分もあるらしい。
外壁にはイルカやクジラなどの有名な動物はもちろん、深海魚や見たことない魚までありとあらゆる魚がアニメ風に描かれている。
外の店にはお土産屋や飲食店もあり、なかなか充実している。
そして今日は土曜日。親子連れや友達通し、学生や年寄りなど老若男女問わずいろんな人が歩いている。
上条「すげぇ……」
思わずそんな言葉をもらしていた。
建物の大きさもそうだが、人の多さには本当に驚かされた。ここにいる人だけで天宮市の人口を超えるんじゃないかと思ってしまうほどに。
耶倶矢「くくく……我らの遊戯にふさわしい観客よ……」
夕弦「驚愕。壁の魚はどうやって描いたのでしょうか?」
耶倶矢はいつも通りとして、夕弦もこの大きな建物に驚きを隠せないようだ。
とりあえずここで立ち往生をしていて
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