拭えない過去
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いたサファイアはそのあたりのことは夢の中の出来事と同じく忘れてしまっている。
(と、とりあえずそっと離れて……駄目だ!?寝てるのに離れてくれない!?)
ルビーを起こさないようにそっと体を動かしているせいもあるが、彼女は自分にツタ植物のように絡みついて離れない。ポケモンの技のまきつくってこんな感じなのかーとか寝起きの頭で思うがそれどころではない。早くなんとかしないと彼女が起きてしまう――。
「……ん」
(起きた!?)
ぼんやりと目を開けたルビーは、慌てふためくサファイアの顔を見て、緩み切った顔で微笑んだ。寝顔も可愛かったがこんな表情もするんだな――と思うがだからそれどころではない。
ルビーも自分の状況が理解できず慌てるかするかと思ったが、彼女は平然と腕を離して、体を起こしていった。
「おはよう、サファイア君」
「あ、ああ。おはよう」
「昨夜は楽しかったね?」
「なっ……!?」
にやりと笑ってルビーが言うので、健全少年のサファイアとしてはやはり困惑せざるを得ない。とりあえず、なんとか、言葉を絞り出す。
「……冗談だろ?」
「冗談だよ」
とりあえず良からぬことにはなっていなかったようで安心する。だがしかし、ルビーがなぜ自分に抱き付いて眠っていたのかについての疑問は解決していない。
「で、なんでルビーがここに?」
「ん……そうだなあ」
正直に話す気はない。話せばきっと、彼は自分を必要以上に心配してしまうだろうから。今はまだその時ではないだろう。
(ありがとう、サファイア君)
そう思いながら、彼女はサファイアの知るいつも通りに――嗤って、こう言った。
「乙女の秘密、とでもしておいてくれよ」
「またそれか!いやでもこういうことは――!」
「へえ、どういうことなんだい?」
「くっ……!」
そんなやり取りをしながら、二人は新しい朝を迎え、新しい街に旅立つのだった――。
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