拭えない過去
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でも何かを成し遂げようとする野心に満ちていた。
残ったのは、役目を押し付けられた自分。役目をまともにこなせない自分。誰からも認められない自分……そんな自分を奮い立たせるために、ルビーはこんな性格になった。他人を、自分を嘲り。全てに対して無関心で無感動に生きる。そうするしか、出来なかったのだ。
「……また、この夢か」
ルビーは夢から覚める。この夢を見るのは、随分久しぶり――そう、旅に出て、サファイアにあってからは初めてだろう。昼間に思い出してしまったせいだな、なんて冷静に思おうとする。それでも、濡れる瞳を乾かすことは出来なかった。ホウエンの夜は温かいのに、体が震えて止まらない。
「情け、ないなあ……」
そう思いながらも、ルビーの足はふらふらと別室にいた彼の元へ向かう。唯一自分に温かい言葉をかけてくれた、サファイアの元へ。彼は眠っていたようだが、ドアの開く音で目を覚ましたようだ。
「ん……ルビー……?」
「……」
ルビーは何も言わず、寝ぼけているサファイアに無言で雪崩かかる。まるで幼い子供が悲しくてぬいぐるみを抱きしめるような仕草だ。
「うわっ……!?」
突然抱きしめられるような恰好になって驚きを隠せない。だがすぐに、ルビーの肩が震えていることには気づいた。
「ルビー……泣いてるのか?」
「……なんでもない」
ルビーは震える声で、絞り出すように言った。そして続ける。
「ただ……このまま眠らせてもらってもいいかい……?」
寝ぼけているサファイアには、何が何やらわからない。いや、ちゃんと起きていてもルビーが泣いて自分に縋っている状態は理解できないだろう。
「…いいよ。おやすみ、ルビー」
ただ、彼女がそうしたいならそうさせてやればいい。そう思い、彼女の背中をさすろうとするが、その前に再び目をつぶって寝てしまった。ルビーがそれを見て苦笑する。流れる涙が、少し止まった。
「ふふっ……よっぽど疲れてるんだね。大分無茶したみたいだしそれもそうか……おやすみ、サファイア君」
もう一度サファイアを抱きしめ、彼の温もりと匂いに少し安心しながらルビーも再び眠りにつく。朝になるまで、彼女が夢に苛まれることはなかった。
――翌朝。目を覚ましたサファイアは自身の状況に困惑した。人間、あまりに驚くと声すら出ないものである。
(……なんでルビーが俺に抱き付いて寝てるんだ!?)
ついでに言うなら自分も彼女の背中に手を回して抱きしめているとも言えない状況である。ルビーは自分に抱き付いて離れず、すやすやと眠っている。それも何故か顔を赤くしていた。泣いていたせいなのだが、寝ぼけて
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