拭えない過去
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ーで休もう」
「ああ、ポケモン達も回復させないといけないし……」
二人はジムを出て、ポケモンセンターへと移動する。そうしながら、ルビーはあることを思っていた。
(この町を救った英雄、か)
(無価値、役立たず、能無しだと言われ続けたボクにも……それだけの価値が、あるのかな?)
果たして自分がサファイアに偉そうなことを言えた口か、と過去を思い出し。それに囚われる自分を嗤った。そしてその夜――彼女は想起することになる。
――この程度の術も扱えんのか!?
――本気でやりなさい!!
――シリアはあんなに出来が良かったのに、お前はどうしてそんなに愚図なんだい!?
――霊に体を乗っ取られるとは……この出来損ないが!!
夜。ルビーは久しぶりに、己の過去に苛まれていた。自分の父が、母が、祖母が祖父が。自分の不出来を、遅さを、情けなさを。徹底的に糾弾し、罵る。
シリアがおくりび山の宮司となることを放棄した後、ルビーはおくりび山の巫女になるべく厳しく育てられた。それまではシリアが優秀だったため、甘やかされる――というかほとんど放置されていたこともあり、彼女にとってそれは生きながらにして地獄でしかなかった。
――いい!?あなたはおくりび山の巫女として、ここに住まう御霊を鎮める義務があるの!それがわかっているの!?いないからあなたはダメなのよ!
そんな事は、とうにわかっていた。だがルビーには、兄ほどの才能はない。いいや、人並みですらない。地獄のような毎日を生き抜くために彼女は、少女として歪んだ。厳しく育てられ始めた後に出会ったサファイアという一筋の希望がなければ、彼女は自殺していたかもしれない。
そして夢の中で父たちに罵られた後に出てくるのは、旅に出る前の兄。当時はまだルビーと同じ黒髪の彼は、幼いルビーの髪を掴み思い切り引っ張る。
――くそがっ!!なんで俺がこんなことしなきゃなんねーんだ!!なんでてめえはぬくぬくと菓子食ってんだよ!おかしいだろうが!!ああ!?
おくりび山の宮司になるべく最初から厳しく(出来が良かったため、ルビーのような目にはあっていない)育てられていた彼は、他の家族に見えないところでストレスをいつもルビーにぶつけていた。幼いルビーはまだ家のことがわからず、ただ泣き叫ぶことしか出来なかった。そしてそんな彼女を助けるものは、誰もいない。
――俺はこんなところで一生を終えるつもりはねえ……ここの管理は、テメエがやってろ。
彼が旅に出る直前。ルビーに放った彼の表情を決してルビーは忘れないだろう。その表情はルビーへの憎悪と――何よりも、他の誰を犠牲にして
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