第2章 異世界戦記
第35話『異世界』
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警察って、この世界にあるのかも疑問だ。
様々な疑問が頭に次々に浮かぶ。
お陰で、目の前に迫っていた人物に気づかなかった。
ドン
「あ、すいません」
「いえいえ、こちらこそ」
肩がぶつかり、即座に晴登は謝罪する。相手も謝罪を返してきた。
そして2人はそれぞれ逆の方向へと歩を進める。
背丈は同じくらいの子だった。もしかしたら同い年かも。
晴登は今の人物に、そんな解析をした。
やっぱ人が居たんだな、この村・・・
──って、何で俺は今スルーした?
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
後ろを振り返って叫びながら、晴登は今しがた邂逅した人物の背中を追って走る。
異世界で出会った初めての人だ。まして歳も近そうである。そんなチャンスを逃す訳にはいかない。
「?」
呼びかけが届き、その人は振り返った。
晴登はその人物に追い付くと、肩で息をしながら前を見る。
そこで、晴登はようやく相手の顔をハッキリ見た。
「な…!」
今のは感嘆の声。それは、目の前の人物の容姿を見たからである。
輝くような銀色の髪に、満天の青空を映したような蒼い瞳。可憐さの権化のような中性的で整った童顔。そして、雪の様に白く綺麗な肌。
現実世界では絶対に見られないであろう容姿を今こうして目前にして、晴登はようやく「異世界に来た感」を得る。
よし、コミュニケーションを取ろう。
そう思って言葉を放とうとした矢先、晴登は重大なことに気づく。
『この異世界で日本語は通じるのか』
この疑問の答えは、部長の説明には含まれていなかった。でも簡単に考えてみると、こんな地で日本語が使われる訳がない。晴登が少しだけ喋れる英語だって、この世界では何の役にも立たない筈 はずだ。
最悪である。コミュニケーションが取れなければ、結局生活も何もできない。つまり、この異世界を生き抜くことが困難になるのだ。
晴登は再度、自らの無鉄砲さを悔やんだ。部長にもう少し詳しく聞き出すべきだったと。
しかし、その後悔は杞憂に終わる。
「どうしたの?」
不意なその発言は、疑問を解決するのには充分だった。
尤も、その言葉を聞いた晴登は、疑問なんぞすぐに忘れてしまったが。
言葉が通じる。
そう直感的にわかっただけでも、晴登は喜びを得た。
「え、いや、その…」
だが事態の好転は、逆に晴登を苦しめた。
『コミュ障』
忘れかけていたその単語が頭をよぎる。
初対面の人との対話。それだけで、彼の中に眠っていたそれは頭角を現した。
「ボクに何か用かい?」
穏やかな、中性的な声
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