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活動日誌16 ぼくたちは・ひとつのヒカリ!
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「……ねぇ、雪穂?」
「……なぁぃ、ぉ姉ちゃぅ……?」
それは去年の春のこと。私の耳にも噂として流れてきた『音ノ木坂学院廃校』の話。
廃校の噂を聞いた私が、別の高校を受験しようと思って貰ってきたUTX学院の入学パンフレットを目にしたお姉ちゃんと、軽い衝突を起こした、あの日――。
私はお姉ちゃんが簡単に口走った「ことりちゃんと海未ちゃんとで考えているから、なくならない」の一言に、とても腹が立っていた。
だって、お姉ちゃん達3人の力でどうにかなる問題じゃないんだから。
どんなに頑張ったって学院は廃校しちゃうんだから。
おばあちゃんやお母さんが通っていた音ノ木坂学院。
そして、小さい頃にお姉ちゃんと一緒に店の手伝いをしていた時。お店を訪れるお姉さん達が着ていた、私達にとっての憧れの制服。
一昨年のお姉ちゃんの入学式直前。
真新しい学院の制服を、何度もお母さんや私に見せていたお姉ちゃん。正直すごく羨ましかったのを覚えている。
お姉ちゃんの妹の私には、あの時は着て見せることなんてできなかった。
ううん。去年だって、着て見せることは叶わなかったんだけどね。
だけど、来年には絶対――そんなことを思っていた矢先の廃校の噂だった。
おばあちゃんやお母さん。そして、お姉ちゃんが通う音ノ木坂学院。
そんな、お姉ちゃんが身に包んでいる制服を、私は着ることが許されない。学院に通うことが許されない。
だからと言って、自分ではどうすることもできない――もどかしさ、悔しさ。
そして、お姉ちゃんと同じ制服を着て、一緒の時間を過ごせない悲しさに蓋をして、UTX学院へと気持ちを切り替えていたのにさ?
あんな簡単に言うんだもん。怒りたくもなるじゃん? でも、それ以上に――
自分の口から出た「どうにかできる問題じゃない」と言う言葉が、来年の私を閉ざしているようで、何も見えてこないようで――
「……悔しいけど、もうどうしようもないじゃん!」
不安で辛くて、悲しくて。気づいたら涙を溢しながらお姉ちゃんに想いをぶつけていたのだった。
そんな私を、無言で優しく抱きしめてくれていたお姉ちゃん。
もちろん、お姉ちゃんの言動に悪気がないのは理解している。
お姉ちゃんだって「本気で何とかしたい」って想いからきた言葉なんだろうしね?
それがわかっているから。それでも何も変わらないことを知っているから。
暖かいお姉ちゃんの温もりを感じながら――涙はしばらくの間、私の頬を伝い続けていたのだった。
♪♪♪
その日の夜。私は数年ぶりに、お姉ちゃんと一緒に寝ることにした。
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