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第六十二話 稲妻が走ります。
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帝国歴486年9月27日――。
ノイエ・サンスーシ 黒真珠の間――
ブランデンブルク侯爵家の跡目争いは、ついに枢密院や貴族議会で審議されることとなった。正確に言えば、枢密院で一案を作り、それを貴族議会に提出して可決される、という流れである。ブラウンシュヴァイク公もリッテンハイム侯もそれぞれ自派の派閥を構築することに懸命になっていた。表立っては違法でも何でもない以上、リヒテンラーデ侯爵もそれを留め立てする権利もない。ない代わりに彼は皇帝陛下にひそかに拝謁して事の次第を報告していたのである。
「ブランデンブルク侯爵家の跡目については、確かに決めなくてはならぬことでございます。しかしながら陛下。臣が憂いておりますのは、この跡目争いというものはあくまでも表だったことであり、本題は恐れ多くも皇帝陛下の跡目相続にあるのではないか、とのもっぱらの噂でございます。」
「はっはっは。それは難儀じゃな。」
フリードリヒ4世は他人事のように薄く笑った。
「ブラウンシュヴァイクの子息・子女かリッテンハイムの子息たちか、いや、リッテンハイムにはもう一人子女がおったな。」
「サビーネ・フォン・リッテンハイムには、例の女性士官学校と申すところに入校し、いまは候補生の身分と聞いております。が、先日の自由惑星同盟を称する反徒共への使節の一員として同行したとか。」
「ふうむ・・・。」
「そのようなことよりも、陛下――。」
「わかっておる。余がブラウンシュヴァイク公らをここに呼び、跡目を継ぐ者は誰々と皆の前で申し渡せばよいというのであろう。」
「恐れ多きことながら。」
フリードリヒ4世はかすかに首を振った。
「そなたの申す通りにすれば、一方からは怨嗟の声を受けるであろう。その声が果たして声だけにとどまるか否か、どう思うな?」
リヒテンラーデ侯爵は沈黙した。フリードリヒ4世陛下の言葉は分りすぎるほどわかっていた。このような跡目争いに敗れた側は、そのままでいるとは思えない。場合によっては「君側の奸を除く。」などと称し、反乱の兵を上げることも辞さないだろう。
「いっそ両名を呼んで申し渡すか。血みどろの争いを繰り広げてみよ。御前の前であろうと遠慮には及ばぬ、と。」
「・・・・・!!」
リヒテンラーデ侯爵は戦慄を禁じ得なかった。冗談とも思えぬような調子だった。穏やかな声であるが、その中には一種冷徹な突き放すような声音も交じっていたのだった。
「ともあれ、陛下。まずはこの問題を多数の中で話すことこそ肝心かと。体勢の中で跡目争いが決せられれば、ブラウンシュヴァイク公もリッテンハイム侯もそうそう暴挙には出まいかと愚考いたします。」
「国務尚書の良きように。」
最後は必ずそうであった。重臣たちが拝謁する際、皇帝陛下は時たまはっとするような一言を発するのであったが、それが決断
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