第三十六話 お墓地その六
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私は阿波野君にです、こうも言いました。
「難しいからね、それも」
「人を嫌わないこともですね」
「人は好き嫌いがあるから」
本当にどうしてもです。
「嫌いな人も出来るわ」
「じゃあ僕もですね」
「どうしてもそうした人が出来るのはある程度仕方ないけれど」
「けれど、ですか」
「それを顔に出すことはあまりね」
本当にとです、こう言いました。
「よくないの。ただ好きだってことは表に出してもいいわ」
そうですか、僕そっちも思いきり出ます」
「とかく好き嫌いが顔に出るのね」
「態度にも、好きな人にはそうしていいんですよね」
何か私の方をにこにことして観てきます、その顔が凄く気になります。阿波野君は時々こんなことをしてきます。
「笑顔を向けて」
「誰にでもね」
「それはかなり難しいけれど」
私の方をにこにことして見続けています。
「そうしていきます」
「だから誰にでもね」
「まずは好きな人から」
「全く、人の話は聞きなさい」
こう言ってるとです。
目の前に天理高校の男子寮が見えました、北寮です。東寮と違って高くてしかも棟が幾つかあります。その北寮を見てです。
阿波野君は私にこんなことを言いました。
「大きな寮ですね」
「入ってる子の数が違うからね」
「男子生徒の方が多いですからね、天理高校って」
「そうなのよね、東寮は小さいのよね」
高さも棟の数も大きさ自体もです。
「これが」
「僕何度かあの前通りました」
東寮のです。
「確かに北寮と比べるとずっと小さいですね」
「中にいる子の数が違うからね」
理由はこのことに尽きます。
「それでなのよ」
「そういうことですね」
「そう、ただ」
「ただ?」
「阿波野君っておぢばのあちこち歩いてるのね」
「詰所の前は全部通りましたね」
何処か誇らしげに言ってきました。
「もう」
「そうなのね」
「それで北寮の中にもお邪魔してます」
「何度もよね」
「寮の友達に誘われまして」
それで中にお邪魔したこともあるみたいです。
「楽しい場所ですよ」
「というか阿波野君って何処にも行くのね」
「基本そうですね」
「ううん、何かね」
私は阿波野君のお話を聞いて思いました。
「凄く馴染んでるわね」
「天高にですか?」
「おぢばにもおみちにもよ」
「どれにでもですか」
「詰所にも馴染んでるし」
それこそお家みたいにです。
「もうね」
「何か妙に居心地がよくて」
笑って私に言いました。
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