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真田十勇士
巻ノ六十一 姫武将との戦いその十一

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「左様です」
「お名前は聞いておりまする」
 幸村は甲斐姫に礼儀正しく告げた。
「そのご武名は」
「左様ですか」
「そしてです」
「この度はですね」
「手合わせを願いたい」
 両手にそれぞれ十字槍を持っての言葉だ。
「宜しいか」
「はい」
 甲斐姫は幸村の言葉にすぐに答えた。
「それでは」
「お手合わせを」
 甲斐姫も礼儀正しく応える、そしてだった。 
 二人は一騎打ちに入り周囲でも戦いがはじまった、闇夜の中赤と白の軍勢がそれぞれ激しくぶつかり合う。
 それはまさに一進一退であった、幸村と甲斐姫のそれも。
 互いに引かない、幸村は二本の槍を駆使するが。
 甲斐姫は薙刀でそれを防ぎ反撃を加える、助けに来た島はそれを見て思わず唸った。
「これは凄い」
「はい、見事なですな」
「お二人共」
 島の周りの者達も言う。
「実に」
「あそこまでとは」
「源次郎殿も甲斐姫殿も」
「見事なものです」
「まさに武者です」
「うむ」
 島も言う。
「あれはな、鬼じゃ」
「お二方とも」
「まさにですな」
「戦の鬼ですな」
「鬼の様な強さですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「見事じゃ、しかし」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「甲斐姫が足止めを受けている間にな」
 そして風魔もというのだ。
「城を攻めるか」
「そうしますか」
「今のうちに」
「そして攻め落としますか」
「そうしますか」
「うむ、そうしようぞ」
 島は自身が率いる兵達に言った、そしてだった。
 忍城を攻めんとする、だがだった。
 その彼等のところにも北条の兵達が来て立ち塞がる、島はその彼等を見て即座に察した。
「成田殿の兵達か」
「この城の本隊ですか」
「その兵達が来ましたか」
「うむ、この者達を倒さねば」 
 島は鋭い目でその彼等を見て言うのだった。
「忍城は攻め落とせぬ」
「では」
「これよりですな」
「我等も戦いましょう」
「北条の兵達と」
「この者達を破り」
 そしてというのだ。
「忍城を攻め落とすぞ」
「わかり申した」
 島も戦いに入った、彼が率いる兵達と共に。そしてそれは本陣もだった。
 石田は自ら槍を取り戦っていた、彼のところにも北条の兵達が来ていたのだ。
 風魔の者達もいた、石田は彼等とも戦いつつ本陣の兵達に言った。
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