第三百七十三話
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第三百七十三話 自衛隊の人達
海上自衛隊舞鶴基地は海上自衛隊の基地の中では屈指の規模である。横須賀、呉、舞鶴、佐世保そして大湊が大きな基地だ。
その舞鶴基地は今は日常の中にあった。災害も事故もないと自衛隊は至ってのどかなものである。それでだ。
総監も総監部の執務室で静かにデスクワークを行っていた、そして。
護衛艦でもだ、兵士達が青の作業服姿で艦内清掃にあたっていた。若い士長が二曹の階級の男に言われていた。
「こうした銅のところもな」
「ちょっと油断しますと」
「錆びるからな」
「はい、簡単に」
その銅の部分を特別な洗剤を付けたうえで布で隅まで磨きつつ応える。
「青いというか青緑の錆が出て」
「汚いからな」
「だからですね」
「こうしてな」
「ちょっと時間がありますと」
「磨いておかないとな」
「そうですね、ただ二曹も」
見れば彼も磨いている、銅を。
「磨いてますね」
「ああ、俺もな」
「磨かないとですか」
「人にやれっていうからにはな」
それこそというのだ。
「自分もやらないとな」
「だからですか」
「言うだけで何もしない奴は嫌いなんだよ」
二曹は顔を顰めさせて士長に言った。
「昔からな」
「ああ、そういう奴いますね」
「いるだろ、自衛隊には」
「はい、自分は偉そうに言って」
そして下の者にやらせて自分は何もしないのだ、体育会系にはこうした輩がよくいるが自衛隊は体育会系そのものの組織であるのでこうした輩も多い、自衛隊の悪い部分だろうか。
「嫌ですよね」
「入隊してすぐにそんな万年士長でいたんだよ」
「ああ、そういう士長ですか」
「それからな」
「自分も、ですね」
「自分がそんな奴になりたくないからな」
「そういうことですね」
若い士長も納得して頷いた。
「わかりました」
「ああ、それで俺もやってるんだ」
「やれって言うからには」
「自分もな」
「そういうことですね」
「じゃあ磨くぞ」
二層は率先して磨いていた、そして。
銅は黄金色に輝く様になった、それも隅から隅まで。二人で奇麗に磨いたかいがそこにはっきりと出ていた。
第三百七十三話 完
2016・9・2
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