第53話 人形
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
る言葉だった......人形に成りきれなかった人間として最後まで棄てる事が出来なかった想い。
「お前なんかが......簡単に成れる代物じゃねーよ」
呟くようにサソリは言った。
意識してでは無く、無意識的に自分を自嘲するかのように鋭く冷淡に......
「はい?」
ミサカは聞き返した。
「何でもねーよ。少し腕の角度を直した方が良いな」
サソリは前に出していた腕をゆっくり下降させて、台の上に三代目 風影の人傀儡を置いた。
ミサカは、解かれた指の糸の感触の余韻に浸りながら両手を見つめた。
味わった事がない心の充実感にミサカは、やや興奮気味に質問した。
「ミサカにも操れますか?」
「傀儡使いになりたいのか?」
「ダメですか......?」
サソリは、風影の腕を外すと微調整をしてくっ付けた。
「......」
サソリは部屋の戸棚から黙って糸を用意して風影の傀儡の節々に付け始めた。
糸の末端には指輪状になっている操り手があり、サソリはミサカの指に丁寧に嵌め始めた。
「まずは立たせるところからだな」
それは、傀儡使いとしてミサカの修行を認めた瞬間だった。
「はい!」
ミサカは指を乱雑に動かしてみるが、傀儡は座っている姿勢から少し右側に傾いて、崩れるように台の上に折り重なるように倒れこんだ。
「あ.......すみません」
先ほどとは勝手が違い思うように風影の傀儡が動かせずに申し訳なさそうにサソリを見た。
「デタラメに動かせば良いってもんじゃねーよ。少し肩の力を抜け.......あと自分の呼吸を合わせろ」
真剣に傀儡と向き合うミサカの姿がかつての自分の子供時代と重なる。
がむしゃらに傀儡に没頭していた自分。
それだけの為に存在しているかのように感じていた。
サソリは腕を組んで、ミサカの横顔を見た。
どの指が傀儡の人形に対応しているかを見定めるようにじっくり観察して、ゆっくり確実に進めていく。
やはり、根本的に向いているのかもしれねぇな
ここは、御坂とは違う根気強さがあるようだ
それに、サソリには『ゼツ』が言った一言に怒りを覚えていた。
人形風情ガ生意気ナ
サソリにとっては一生涯追い求めた傀儡を軽んじられ、全否定された気がした。
このミサカを一人前にする事こそ、ゼツに対抗する手段であり、傀儡使いとしてのミサカを育て上げるのが自分に課せられた使命ではないかと考えていた。
指を震わせ、汗を流しながらゆっくりと動かした指を組み合わせて、傀儡人形の片膝が立たせることに成功した。
身体は倒れたままで片方の脚だけが地面に垂直に立っているので、かなり歪な姿だが、第一段階を自力で乗り越えたミサカは今までにない達成感にニコッと笑った。
「出来ました!」
「そうか..
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ