第7話 ソラト、やっと言える
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話せば、私が絶望して生きる気力をなくすだろうとお前は考え――」
「違うんだ!」
ソラトは、顔を伏せたまま、大きな声で叫んでいた。
「違うんだ。事実を話したらその場で殺されると思って、死ぬのが怖くて嘘をついただけなんだ! まだ生きてるって言えば、どっかに飛んで行ってくれると思って!
船の話だってそうだ! 本当は東の海の向こうに陸なんてないんだ! デュラを騙して船に乗せて、そのままいなくなってくれればって思って言ったんだ!
僕は全然いい人間なんかじゃないんだ!」
――やっと、言えた。
ソラトは号泣すると、頭を下げたまま「ごめんなさい」を何度も繰り返した。
デュラがどんな表情でそれを聞いていたのかは、ソラトにはわからない。
しばらくすると、頭の上から「そうか、わかった」という声だけが、聞こえた。
「一思いに、殺してくれ! 僕の悪い頭じゃ、これしか思いつかなかったんだ!」
ソラトはそう言ったが、デュラの爪が伸びてくることはなかった。
「ソラト、私もお前に嘘をついていたことになる。お前に謝らなければならない」
「え?」
その意外な言葉に、ソラトの顔が思わず上がってしまった。
「私はお前と最初に会ったとき、『正直に答えれば命は奪わない』と言った……。あれは嘘だ。
一年以上お前と一緒にいたから、今は聞いても大丈夫だったが、あのときお前が正直に言っていたら、間違いなく私は耐えられなかっただろう。きっとお前を殺して、町を焼き払っていたに違いない」
「……」
「嘘はお互い様だ。だからソラト、もう泣くな」
ソラトは、一段と泣いた。
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