第1話 ソラト、嘘をつく
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くらい、ずっと、遠くなんだ」
ソラトは、適当に嘘を重ねた。
「山一つ程度ならば一度も着陸することなく飛べるが。見えないくらい遠いのでは、一気に飛ぶのは難しいか……」
「……」
「人間よ。どうすれば私はそこに行けそうだ?」
このまま適当に飛んで行って去ってくれるのではないか――その希望は、叶わなかった。
「どうした? 答えよ」
ソラトはさらに嘘で対応しようとしたが、答えに窮した。
「……? お前はひどく震えているようだな。
なるほど。そのような状態ではまともに答えることはできないか。
では今日はもういい。町に帰り、一晩考えよ」
「ひ、一晩?」
「そうだ。ここから一番近い町がお前の町だろう?」
「う、うん」
この山に一番近い、大陸南端にある町。ソラトの家はそこにあった。
「落ち着いて考え、明日またここに現れるのだ」
「わ、わかった」
「お前の名は?」
「そ、ソラト……」
「ではソラト。私は裏切者が嫌いだ。もし約束を違えて明日来なかったり、他の人間を寄越すようなことがあれば、山を下りてお前を探し出し、この爪で引き裂いて殺す。そして町を炎で焼き尽くすだろう」
「……」
「勇者さえいなければ、私だけで町の人間全員を殺せる自信はある」
――とんでもないことになった。
震える両足と、止まらぬめまい。
ソラトはヨロヨロと歩きながら、町へ降りていった。
私は裏切者が嫌いだ――そのフレーズを、頭にループさせながら。
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