第34話『切符』
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」などと声を掛ける。
部長は、そんな皆の反応を見て決心したように言った。
「実は…貰った部費の半分以上使った・・・」
「「え?!」」
部長以外の全員の驚きの声が重なる。
俺は魔石と部長を交互に見て、また口をあんぐり開けて固まった。
確か優勝賞金は1億円だから・・・つまり、この石っころに、数千万円の値があるということになる。
「どういう理屈ですかそれ?!」
「そもそもどこで買ったのよ?!」
「すまん…それは内緒だ」
唇を噛み、悔しそうに言った部長。だがどう見ても、それは演技だった。
「…策士かよ」とボソッと呟く暁君が横目に見える。
すると、部長は「それはさておき」と前置きすると、真剣な顔で言った。いや、さておいていいほど軽い話題じゃなかったのだけども。
「この際だから単刀直入に言う。この魔石を、俺じゃない誰かに保管して欲しい」
「「……」」
沈黙が流れる。
たぶん全員、今の言葉の“裏”を探っているからだろう。
あまりに直球な発言。引っ掛け問題では、と必死に頭を働かせる数学の時間の感覚だ。
だがその言葉に大した裏が無いことは、直後の副部長の発言によって証明された。
「あんたって物持ちが悪いもんね」
「恥ずかしながら、な」
「「……」」
再度沈黙。今度は呆れの表情が、全員から見て取れた。
「誰かに保管して欲しい」といった意味。つまり、「自分じゃ保管できない」と遠回しに言っていたのだ。
そして部長は一息つくと、全員に聞こえるようハッキリと言った。
「三浦、任されてくれないか?」
「え?」
部長は、俺の目を真っ直ぐ見据えていた。
*
時刻は午後9時。
ベッドに胡座をかいて座る俺は、目の前の不思議な石に対して唸っていた。
「これで…異世界に…」
常人では理解に苦しむ説明・・・いや、「アニメの観すぎだ」と切り捨てられるような説明を、あの後部長に散々受けた俺。
だが、元々魔術という不可思議な物を持つ俺からすれば、その説明は「魔術」の一言で方が付くものだった。
『これを枕の下に入れて寝る。そうすればやることはおしまい。後は異世界を堪能するだけだ。お前に所持を頼む以上、使うのはお前の意思でいい。早速、今日から使ってみたらどうだ?』
頭の中を流れるのは部長の言葉。
彼は魔石を俺に託した。要するに、それを俺は自由に使って良い。
まぁ、実験台という可能性も否めないけど・・・
「ええい、ままよ!」
勢いで、枕の下に魔石をぶち込む。
そのまま俺は寝転がり、電気を消して眠りにつこうとする。
──眠れな
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