第188話 虎牢関
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流派の支持母体である太学派。彼らは都に三万人ほどおり、地方豪族の紐付きであるため、書生とはいえ一定の勢力を形成する存在である。また、彼らは国を支えているという強い自負心もあるため、正宗が彼女を狭量と指摘したことで矜持を傷つけられたようだ。
荀爽は根は真面目な性格であるため、非は自分にあることを重々自覚していた。しかし、それを感情的に納得できるものでなかった。董卓の兵達に彼女の同僚達が殺されたことはそれだけ彼女のとって許しがたい暴挙なのだ。
「劉車騎将軍、申し訳ございませんでした。都にていろいろあり冷静さを欠いておりました。張中郎将、非礼をお許しください」
荀爽は矛を収めて素直に張遼に謝罪した。彼女は自分の矜持を守ることを選んだ。
「いいえ、気にせんでください。全然気にしていません」
張遼は荀爽に不快感を現すことなく、逆にことが丸く収まり安堵している様子だった。彼女にしてみれば、揉めて先陣に加われない方が困るのだろう。
「話が少し逸れてしまった。名乗りを上げた三人に先陣の任を申しつける。張中郎将、冀州軍より兵五千を預ける。孫豫州刺使、馬寿成にも兵二千ずつを預ける。戦果を期待しているぞ」
正宗は三人に順に視線を向けた。馬騰、孫堅、張遼は正宗に対して「謹んで承りました」と頭を下げ拱手した。虎牢関攻めの先陣役の割り振りが済むと諸将達は散会した。
正宗軍は陣を引き払い虎牢関に軍を進めた。
正宗軍が虎牢関に迫る。その光景を虎牢関から眺める者達がいた。呂布と李粛と陳宮である。呂布と李粛は落ち着き払っていたが、陳宮は傍目からも落ち着きがなかった。蟻の隙間もないほどに兵士達が密集して虎牢関に迫っている。その光景は虎牢関にいる兵士達にいい知れない圧迫感を与えていた。
「あれは何なのですか!?」
陳宮は引きった青い顔で狼狽えた声で呂布と李粛に言った。
「うぉ! 沢山の兵隊すっね」
李粛はのほほんと目の上に手を当て、遠くを眺める様な仕草で反董卓連合軍の威容を凝視していた。
「何を呑気言っているのですか? 有り得ないです。あんな大軍をどうやって迎え討てというんですか! 恋殿! 詠殿は私達を始末する気です」
陳宮は落ち着きなく呂布に迫った。彼女は虎牢関を放棄して立ち去りたい様子だった。彼女にとって呂布が一番大事であり、その呂布に危害を加えた賈?を容認する董卓軍はもはや義理立てする存在ではないのだろう。
「そうは言ってもすっね。一戦もしないで逃げるのも情けなくないすか」
李粛はつまらなそうな顔で陳宮を見ていた。
「咲殿! あなたは馬鹿ですか! 阿呆ですか! 五千足らずでどうやってアレと戦えと言うんですか!」
「音々音、そろそろ出る。皆に準備するように言う」
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