第188話 虎牢関
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かった。これは事前に示し合わせていたためだった。
「私も先陣に加わりたいと思います」
遅れて張遼が名乗りを上げた。今後のことを考えれば、客将である彼女が正宗に心象を良くするために先陣の役目を買うことは彼女の利益になるだろう。虎牢関の主将が過去の同僚であれば尚のことだ。彼女が反董卓連合軍において一番呂布を説得しやすい立場といえた。正宗も張遼が名乗りを上げることは予定通りと見ているのか難色を示すことはなかった。
「恐れながら申し上げます。張中郎将に先陣をお任せになることはお考え直しください」
荀爽は張遼に対して厳しい顔を向け正宗に意見した。張遼は荀爽からの敵意を感じながらも冷静な態度で正宗の言葉を待った。彼女は正宗の意思に従うつもりなのだろう。
「荀侍中、張中郎将を先陣に加えることが不服か?」
正宗は苦笑しながら荀爽にたずねた。彼の態度に荀爽はあまり気持ちいい様子では無かった。
「はい。張中郎将は先頃まで董少府の側近だった者です。呂奉先と呼応して裏切るやもしれません」
荀爽は董卓の現在の官職である司徒でなく、以前の少府と呼称した。これは彼女なりの反発の現れなのだろう。正宗は荀爽の言葉に目を細めた。
「この状況で張中郎将が裏切ったとしても体勢は変わらない。張中郎将が私を裏切るような人物であれば、彼女が私に投降した時に斬っている。私怨で張中郎将を侮辱することは私が許さない」
正宗は厳しい声で荀爽に忠告した。だが、荀爽は張遼を睨みつけた。
「董仲穎は多くの百官を粛正したのです! これは私怨ではございません。公憤にございます」
荀爽はなおも正宗に食ってかかった。彼女は粛正の現場に居合わせ、それを直に経験しただけに董卓への恨みが募っているようだった。元董卓家臣である張遼への疑心の強さはこの場にいる諸将達の中で一番であろう。
「では聞こう。百官の粛正に張中郎将が関わっていたのか?」
「それは」
荀爽は言葉に詰まった。
「この目で見た訳ではありません。ですが、張中郎将は董少府の腹心である賈尚書令とよく行動をしておりました」
荀爽は尻すぼみに先程までの威勢を無くした。賈?と張遼がよく一緒にいるところを見たから粛正に関わったかもしれないというのは暴論と言えた。苦し紛れの詭弁であることを荀爽自身も自覚しているようだ。
「張中郎将は董仲穎を見限り私の元に身を寄せたのだ。そうであるな張中郎将?」
「その通りです」
張遼は正宗の助け船を受け直ぐさま答えた。
「荀侍中、太学出身のそなたが思い込みで判断を乱すことがあって良いのか? 一緒にいたら粛正に関わったとは、些か乱暴が過ぎると思うのだが」
正宗の言葉に荀爽は言葉に窮した。荀爽は太学出身である。清
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