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第六十一話 暗雲が立ち込めています。
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の最終調整会議に出席していて不在だったので、フィオーナの下を訪れたのである。
「どうしましたか?」
フィオーナは尋ねたが、サビーネの顔を見て、すぐに、
「今美味しいダンプフヌーデルが出来上がったんです。ティアナとアリシアが作ってくれたんですよ。良かったら召し上がりませんか?」
「よろしいのですか?」
「ええ。」
にっこりしたフィオーナがサビーネの手を取って部屋の中に案内した。中には数人の女性がいたが、サビーネの姿を見ると、立ち上がった。
「サビーネ様。」
エステル・フォン・グリンメルスハウゼンがあいさつしたが、サビーネは恥ずかしがって、
「嫌ですわ。わたくしはまだ候補生の身です。あなたは大尉なのですから、そのように敬語を使っていただいては困ります。」
「ですが、サビーネ様はリッテンハイム侯爵のご息女でいらっしゃいますから――。」
「わたくしはそのような家柄にふさわしくはないのです。」
「でも――。」
「はいはいそこまでね。」
ティアナが両手を叩いた。
「二人ともこの場では敬語はなしよ。サビーネは貴族社会ではエステルよりも上の立ち位置。エステルは軍隊社会ではサビーネよりも上の立ち位置。つまり、プラスマイナスゼロだもの。そうでしょ?」
そんな単純な話なの?とフィオーナが笑いながらお茶を皆のカップに入れている。それを手伝いながらアリシアが、
「良いではありませんか。お二人とも、良いお友達になれそうですよ。」
エステルとサビーネは互いの顔を見て、頬を染めた。フィオーナとアリシアがめいめいにお茶の入ったティーカップを渡すと、皆が待ちきれない様子でフォークを取った。暫くは、
「これフワッフワ!」
「美味しいですわ!」
「でしょ?ちょっぴりブランデーを入れたの。あとレモンピューレもね。」
「こんなにおいしいダンプフヌーデル、家でも食べたことはありませんわ!」
という会話が食器の触れ合う音、お茶を淹れる音、美味しそうに咀嚼する音交じりに楽しそうにかわされた。
『ご馳走様でした。』
皆が満足したようにフォークを置くと、アリシアが新しくお茶をカップに注ぎ始めた。
「サビーネ、それで今日はどんなご用事?」
ティアナの問いかけに、サビーネは今までの楽しそうな顔を一転させた。一気に顔が暗くなり、表情が沈んでいく。フィオーナ、ティアナは敢えてサビーネに問おうとせず、彼女が自然に話し出してくれるのを待っていた。
「お父様のことなのです・・・・。」
そう小さな声で話し始めたサビーネは、フィオーナたちにブラウンシュヴァイク公とリッテンハイム侯爵の争いに、ブランデンブルク侯爵家の跡目争いが加わって双方が火花を散らしあっていることを話した。
「・・・・お父様はすっかり変わってしまわれました。優しかったお母様も・・・お兄様も・・・・。皆私
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