誕生日記念 野良猫と出会った僕
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与えられるようなケガでないことは、いくら無知な小学三年生の僕でさえ理解できたのだ。
なんの害もない小さな猫が酷い目にあわされていて悲しくて仕方がなかった。
『どうにかしなきゃ...でも、この時間はまだ来てないと思うし、それに...』
そこでひとつ深呼吸を入れる。
冷静になって考えてみると、子猫を飼っていることを教師たちは知らない。
ここで騒ぎを大きくして逆に星空凛や花陽に迷惑をかけるなんてもってのほか。
『見捨てられないんだよね...』
当然だった。
命はたった一つ、どんな生き物にも必ずあって、そう簡単に失ってはいけないものだから。
それは悪いことだから。
だから僕は必死に頭のフル回転させる。
なにかないか?何か...手立てはないのか?小学生にしては大人びた表情で震えるパンダを抱える。
その時、背後から草と砂利をシューズで踏む音が聞こえた。音を発した主は、
『春くん?どうしたのかにゃ、こんな朝早くに血相変えて』
彼女がやって来たのだ。来るのには早すぎる時間だとふと自分の腕時計を確認する。意外にも時間はかなり立っているようでもう少しで児童たちや先生方が学校にやってくる時間になっていた。
時間経っていることに気づかないくらい僕は焦っていたことに心底びっくりした。
『星空さん...子猫が、パンダが!』
『えっ!』
僕の普段らしくない焦燥の声と表情ですぐに理解したのか彼女は駆け寄って僕から子猫を預かって容態を窺う。
全身の傷を見た後、今度は一番酷い前足に。顔色が青く冷め、『春くん、先生呼んできて!』と見向きもせずに叫んだ。
『でも!これでばれちゃったら──』
『パンダをここで見殺しなんてできないにゃ!』
『っ!!!』
初めて聞く星空凛の声色に僕はこれ以上口を開くことができなかった。
黙って頷き、一目散に職員室へ駆け出した。
あまり運動は得意なほうではないけども気にしている暇はなかった。
その後、僕と星空凛、そして花陽も職員室に呼ばれた。
子猫は先生の車で動物病院へ運ばれ、大事には至らないとのことで三人は安堵したものの、学校の規則を守らなかったということで事情を説明し、小一時間ほど指導を受けた。
星空凛は『そんなの間違ってる』と抗議したけど、所詮は小学生の我儘と捉えられ、先生は相手してくれなかった。
仕方ないとはいえ、これじゃああのまま子猫を放置すべきだったと遠回しに言われているような気がして苦虫を噛み潰したような気分でその時間を過ごした。
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