誕生日記念 野良猫と出会った僕
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『ど、どうかな?似合う...?』
この時の彼女はただ純粋に聞きたいだけだったのだ。
実のところ、この眼鏡の少年は星空凛に淡い恋心が芽生えていて、彼女の前だと素直になり切れない一面を持っていた。だからだろうね。
星空は、少年が自分に恋をしているなんて気づくこともなく聞いてしまったのだ。
幼い恋というものは時には残酷になってしまうこともある。
『な、なんか似合わねーっ!!!!!』
『ほんとそれな』
『え......』
本心からそう言ってるつもりが無いことは頬を染めている姿を見れば十分に伝わったはずだ。
だけどまだ彼女は小学生。
『あまり女の子らしいことするなよ星空〜』
『そーそ。お前は男っぽい振る舞いするからみんなに人気なんだぜ?』
彼をきっかけに言いたいように言いまくる。
その発言が彼女のことを傷つけていることを知ってか知らずか。星空は驚愕と悲痛に溢れた表情を一瞬だけ見せ、ひゅんとすぐに笑みを浮かべる。それは作り笑顔であることは明らかだった。
『み、みんな酷いにゃ〜。私だって女の子なんだからスカートくらい履きたくなる時だってあるにゃ』
『でも、星空のこと誰も女の子だって思ってないぜ?』
『...え?』
『お、おい。それ以上は言い過ぎなんじゃ───』
『その隣の小泉も高橋もきっとそう思ってるよ』
『そ、そんなこと言わないでよ。凛ちゃんが可哀想です』
僕らが静止にかかっても聞く耳持ってくれなかった。
...どうして彼らはそう言うのだろうか。今となっては理由はわかる。言っていることの反義が本音だということを。
『やべ!!今日日直だったの忘れてた!急がなきゃ!学校まで競争だ〜!』
『ええっ!?負けてたまるかこんちくしょ〜!!!』
気まずくなった眼鏡の少年は話を区切る。
いきなり登場して風のように走り去る彼らの後姿を眺める僕は、横目でちらりと星空凛の様子を伺う。
花陽も心配していて、そっと手をつないでいた。
彼らが駆け出す中、ただただ星空凛は肩を震わせて小さな雫を流すだけだった。
初めて彼女が泣く姿を見た。
『私、帰って着替えてくるね』
本当に帰してもいいのだろうか。そんなこと絶対にないのに。
彼女にスカートは似合わないなんて......
『そんなことないよ凛ちゃん。凛ちゃんはいつだって女の子だよ!』
『ありがとねかよちん。だけど今は、一人にして欲しいにゃ』
『でも──』
『お願い』
僕は何もできなかった。
それがいつものこととはいえ、声をかけることも止めることも。
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