誕生日記念 野良猫と出会った僕
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、星空凛はすぐに顔を戻して一点を見つめている。
何を見ているのかその視線の先を辿ると長方形の段ボール箱。そのなかにちんまりとした子猫がいた。
種類はわからないけど、白をベースとした毛の色で黒い斑点が全体にぽつりぽつりとあった。
そして、段ボールに張り紙が張ってあり、『誰かひろってください』の一言のみが書かれてあった。
『捨て...猫?』
『そうみたいだにゃ。なんだか可哀想』
『...何をあげてるの?』
『さっきコンビニで買った煮干しにゃ』と言いながら、星空凛は煮干しを細かくしてからその捨て猫にあげる。よほどお腹がすいていたのか、目の前に差し出された煮干しを勢いよく口の中に入れ、無くなったかと思うと子猫は彼女の顔を見て『にゃ〜』と鳴き声でアピールする。
『とってもかわいいにゃ。なんだか妹におやつを分けている気分だ』
『星空さんには妹さんがいるの?』
『ううん。私は一人っ子』
『そうなんだね』
特に盛り上がることにない、とりとめのない話。
星空凛は子猫への餌やりに夢中で傘がずれて自分のスカートが濡れていることに気づいていない。
僕はその、濡れているところに自分の傘をかざす。
『子猫、可愛いね』
『...そうだね』
次第に雨は強くなる。
早く帰りたいのはやまやまだが、このまま彼女を放置してもいいのだろうか?まぁ、普通無理だよね。
『私ね、猫アレルギーなんだ』
『そうなの?じゃあ子猫に近づいちゃダメなんじゃない?』
『触れない程度なら大丈夫にゃ。でも、家で飼うのはできない...でもこの子を放っておくのもできないにゃ』
ちらりと僕を見る。
おっけ、彼女が何を僕に訴えているのか瞬時に分かった。額からじわりと汗が流れ落ち、それでも一応質問してみる。
『ど、どうしたのかな?そんな目をして...』
『この猫さん、春くん飼ってくれないかな?』
『え、えぇ〜...』
予想通りの質問に苦笑いで返す。
そもそも猫なんて買ったことないからしつけ方も知らないし、飼うとなると餌代などの費用がかかる。
何より猫嫌いなお母さんに見つかったらその場で捨てられるかもしれないのだ。いや、かもしれないじゃない、確実に捨てられる。
『ごめんね星空さん。僕のうちはお母さんが猫苦手で多分飼ってもすぐに追い出されちゃうかもしれないんだ』
『そ、そんな〜!!』
星空凛は心底残念そうな顔をして急に立ち上がる。
手から傘を離して道端に音を立てて転がり落ちる。雨が強いため、すぐに彼女はびしょびしょになってしまった。
『ちょ、ちょっと!傘ちゃんと持たないと濡れちゃうよ!というかもう濡れてるし...』
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